http://www.2ko2kora2ko6256.com シバジョーのブログ: 8月 2017

2017年8月31日木曜日

仕事の支え

今私は大きな山を登っている最中です。
山並みは険しく山頂までの道はまだまだ遠い。

そんな辛い時に、このブログが支えになっていることに最近気づきました。

ブログの更新も大変な時はありますよ。仕事に追われ時間が無い上に、書くことが無い! なんてこともしばしば。
 それでも更新を続けていくのは、やっぱり私は記事を書くことが好きなのでしょうね。
そしてどうしようもなくどんなにつまらない記事をアップしても、毎回読んで下さってコメントやメッセージを送ってもらえると、本当に励みにもなります。
投げ出しがちな私がここまでブログを続けられたのも、応援して下さる皆様のおかげだと感謝しています。
最初にブログを開設した時なんかはほんの一週間で投げ出しましたからね。

仕事終わりに無理をしてでもパソコンの前に座り、ニヤニヤしながらブログの記事を書くことが習慣にもなってきてますし、やっぱり私は物を書くことが好きですからブログを続けていくことは楽しいのです。


生きていく中で辛いことは絶えないものなのかもしれませんが、辛さを隣に置き生活していく中でこのブログの更新や皆様の応援が支えになり、暮らしの一部としてブログが馴染み始めて来たことを感じています。

山を登りながらも私はブログを続けていこうと考えています。何せ好きなことをやりながらの方が山登りも楽しいですからね。

だから何だと思われたかもしれませんがお許しください。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月30日水曜日

シャンプーの悲劇


昨夜部屋に戻り晩御飯を軽く食べ、私は一日の疲れと汗を流すべく風呂に入りました。
 私はいつも頭から洗うのですが(←どうでもいい情報ですね)、髪を一度洗い流しシャンプーボトルを持ち上げると……軽い!
「だぁ~~~、そうだった。昨日で全部使いきってたんだよ! 何で風呂入る前に気づかないんだ~」と、学芸会レベルの演技しかできない俳優のように一人セリフを吐き、買い置きしておいた二本のシャンプーボトルを取るため一度風呂場から出て体を拭きました。
身体を拭くのはけっこう手間なんですが、シャンプーをしないではいられません。
私はスリッパを履き、シャンプーがしまってあるキッチンへ急ぎました(何でシャンプーをキッチンにしまってんだよ、風呂場に置いとけ。というツッコミはなしで笑 いろいろ事情があるのです)。そしてキッチンの下の洗剤やらシャンプーやらの収納スペースを開けると・・・・・・・・・・
「あれれ~~、シャンプーが無い。おかしいな~、どこにいったんだろう」 状態ですよ



しかも白も黒も二本ともない!(私はMORIO FROM LONDONのシャンプーを愛用していまして、日によって白と黒を使い分けているのです)
買い置きしておいたはずなのにどこにもない! ない! ない! ない!
部屋中探してもどこにもない!   パニックのあまり頭の中では井上陽水の「何故か上海が鳴り響いてました。海を越えたら~ しゃ~んはぁぁぁぁいって曲ですよ! 古いですね。でも私は思わず歌ってしまいましたよ。
とびーらあけたら シャンプーがなぁぁぁい! と。
もう愕然です。
時計を見ればもう午後十時半過ぎ。こんな時間まで美容院が開いてるわけがないですし、わざわざコンビニまでシャンプーを買いに行くのも面倒だったので、仕方なく3年前に頂いた市販のシャンプーを引っ張り出し使いました。
それで風呂上り・・・・・・・
髪の毛はもうギッシギシのヌッタヌタ。いや、3年前のシャンプーですから仕方ないとは思いますけど、使い慣れたシャンプーから他のものに替えるとここまで違うのだなと実感しました。サラダ油を髪の毛に吹きかけた様な感じ。
それで先ほどシャンプーを買いに行ってきたわけですよ。仕事を抜け出し大急ぎでMORIOへ。この際ですから白と黒のシャンプー3本づつ買っておこうと。(私は現在違う美容院を使っているため、MORIOにはなかなか行く機会が無いのです)
 美容院に入り私がテクテクとカウンター前まで歩いて行くと、私の事を覚えていてくれた美容師さんが来てくれたので、シャンプーを注文すると・・・・・・
「もう黒い方は廃版になっちゃいましてお店にもないんです。それに白もお店にある限りでもう作らなくなるみたいです」
マジか マジか マジか・・・
愛用のシャンプーが無くなるということで倒れ込みそうになりながらも、店に置いてあった白い方のシャンプーを6本買ってはきましたが、これからどうしようと頭を悩ませております。


やってくれたな、MORIO FROM LONDON… 


最後までお読みいただきありがとうございました。

極度の方向音痴

いくら気をつけていても治らないものが私にはあり、その中の一つが方向音痴です。
私はもうどうしようもないくらいの方向音痴でして、本当にどこででも迷子になってしまいます。
どれくらい酷いかというと、初めて行くビルの場所が地図を見てもわからないなんてことはざらで、デパートではフロアマップを見ても自分がどこにいるかわからなくなりますし、飲んだ後で店を出るとどっちの道を通れば駅に着くのかもわからなくなってしまいます。
 他にもビルの出口の場所が分からなくなって駐車スペースの隅から出てしまい、警備員に怒られたこともありますし、居酒屋で手洗い場から出ると友人たちがどこに座っているのか分からなくなり、手当たり次第にふすまを開けて回り「うわっ誰!?」とたくさんの方を驚かせたりもします。そして最悪なのが酔いが回って来ると私はいつも以上に人の顔の認識が出来なくなりまして、違うグループの席に座り込んでしまい驚愕されてしまうことも。


 その席がノリのいい人達なら「いや、お前誰だよ~。一緒に飲もうぜ~」で済むのですが、タチの悪い人たちの席に座ってしまったものなら「何座ってんだよテメェ、出てけよコラ」と怒鳴り散らされることもあるので困っています。

この悪癖を治すためにはどうしたらいいのか(方向音痴は癖とは言いませんかね)
何かいい薬でもあれば処方して頂きたいものです

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月29日火曜日

友人からの依頼

 怖いものでまた私がブログをやっていると聞きつけた友人がいて、その友人もブログを始めてみたいと言い出しました。それだけならいいんです。ですがその友人は私と同様未だにパソコンが苦手で、ブログ開設までを手伝ってほしいと頼み込まれてしまいました。
正直な話ブログを開設(←開設って言葉であってるんですかね? 自信が無くなってきた)
するぐらい一人で出来るだろうとも思ったのですが、年功序列に厳しい環境に身を置いてきた私にとって、年上の友人の頼みを断ることはどうしてもできず、お手伝いをすることになってしまいました。
 しかしお互いに仕事をしているため、顔を合わせての作業は出来ずほとんどがライン上で、友人「ここどうすればいい?」私「そこはたぶん適用をクリックすればいいんじゃないですか」的なやり取りを、贈られてくる画像をもとにやってました。
 ですがそこは皆さんご存知の通り私もパソコンはかなり苦手な方でして(ごめんなさい、ほとんどの人は知りませんよね)、パソコンを触ることは安物のキウイを食べることくらい苦手なので、いやー苦労しました。
 だってパソコン苦手な人間が、同じくパソコン苦手な人間に質問をぶつけたって多くの問題は解決しませんよ。それに私は海に一匹漂うラッコの精神を持つ人間でして、人付き合いが苦手な困ったちゃんなのです。ですのでそこに「あれわからん、これわからん」「全部わからん」なんて言われると、自分で手伝うといったにも拘らず「うわぁ~~~、じゃあもうわからんことするな!ブログなんかやめちまえ!」と、なってしまいます。
 その友人は何にでも強いこだわりを持つ人でして、それはブログに対しても同様。とにかく細部にまでこだわるのです。「それはそこで、あそこはこれで、それはあっち」という意味不明な言葉にも血液を逆流させて耐え、何とかブログデザインも完成し、「やったーーー! やっと終わったーーー!」と喜び勇んで新しい貝殻を拾いに海に潜ろうとした私に友人が一言。 「画像大きすぎるんだけど」
 目を血走らせながらもその日は友人の家にいたためパソコンの前に座り、画像サイズを縮小してやろうとあらゆる操作をしたのですが、画像サイズが小さくならないんですよ。
もうね、何をやっても小さくならない。ココログやはてなブログなら私でも結構簡単に画像サイズの変換が出来るのに、友人が使っているエキサイトブログでは手の施しようがないのです。
 私の使っているSEESAAもそうなのですが、エキサイトブログに関してもまるで画像サイズの変更の仕方が分からない。
 私の使っているSEESAAもそうなのですが、エキサイトブログに関してもまるで画像サイズの変更の仕方が分からない。

怒りのため、二回言っておきました。

 そんな感じでいつまでたっても画像の方は上手くいかず、結局友人の目標にしていたブログ開設日が来てしまい(初めて記事を上げる日にもこだわりがあったようです。どうしても昨日8月28日に開設したいと)、友人曰くとっておきの画像は使わずに記事だけアップすることになってしまいました。

 バカでかいサイズのまま変更できない使用、どうにかならないものですかね。
それとも私と友人がアホなだけなのか。しかし悔しかった。やってくれたな、エキサイト。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月28日月曜日

老いと筆


年齢を重ねることに恐怖はあるが、80、90まで生きた時の自分を見てみたい気もする。
 人間というものは年齢を重ねるごとに深みが出て、味のある個々の色合いを見せるものであると思います(最近は子供のまま年を重ねる人も多いですが、ここではそういった方たちは省きます)。なんか御老人の方って特徴の強い方が多いと思いませんか?
そこで私は思うのです。はてさていったい私はどんな老人になっているのであろうか。

 これから私がどういった人生を歩むのかはわかりません。保証された人生を生きている訳でもありませんしね。でもきっとどんな人生を歩むにしろ、私は書くことは続けていると思うのです。
それが小説なのか、エッセイなのか、日記なのかはわかりませんがね。
で、私が見たいのは老いさらばえた私自身ではなくて、人生も残り幾ばくも無い私が一体どんな文章を書くのか。今の私の作品とどれだけ表情の違う話を書くのか、それを覗き見てみたい気がするのです。
 人生経験で得たものを糧に達観した心理から作品を書いているのか、多くの物事を経験し縮こまった作品を書いているのかはわかりませんが、とにかく楽しんで作品を書いていてもらいたい。
その筆が老いを描く筆ではなく、老いを元に描ける筆であるように願うばかり。

楽しんで書き続けている限り、下手くそな話でもどこかに光る物はあるはずですから、楽しみを忘れずに執筆し続けていてもらいたいものです。
こんな感じで今日はおしまい

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月27日日曜日


 小説を書くときに私がすることは、書いている話をスクリーンに映すという作業。
実際に映像化され映画化されたシーンを想像するのです。

書いている内容を脳内のスクリーンにリンクさせ、情景・表情・表現・言葉それらすべてを映像化させる。
できる限り忠実に再現させることが大事で、これが出来るようになると執筆中に自分の作品の穴が見えてくるようになってきます。

例えば前後に情景などを説明する分が一切なかった場合に、『青空の下を颯太と陽子が話をしながら歩いていた。』
こう書いていたとして、これをそのままスクリーンに映すと物凄く陳腐な映像になってしまうのです。この一文の場合情報量が極端に少ないのですね。(颯太と陽子は以前私が執筆して没にした話の中のキャラクターです。ただこの二人はすごくいいキャラだったのでいつか違う話で復活させうと思っています)
それではさっきの情報量の少ない一文を少しだけ書き換えてみると、
『連日続く炎天下の青空の下をいつものオリーブ色の綿パンの颯太と、この夏の流行りだというスウェットに白シャツを合わせた薄いメイクの陽子が、陽に照らされた影を民家の塀の側面に映し、5年前に過ぎ去った中学時代の話をしながら横に並び歩いていた』
今度は情報量が多かったので出来れば2行か3行に分けて書きたかったのですが、駄目な方の例文を一文で書いてしまったので、こちらも無理に一文にしました。
どうですか? これだけ情報があればスクリーンにもだいぶ映しやすくなったと思いませんか。できればさらに街の外観などの情報も入れたかったのですが、さすがに一文に入れるのは不格好すぎるので断念。
ですがこの一文にはかなりの情報が含まれています。簡単に上げていけば
・炎天下の日が連日続くということは季節は夏。
・颯太はあまりファッションに気をつかわない
・陽子は流行を追いつつもシンプルな服が好き
・メイクは薄め
・家の塀があることから恐らくは住宅街のようなところを歩いている
・中学時代が5年前なら二人は20歳そこそこくらい
・炎天下の昼間に私服で、横に並びながら歩くことから少なくとも遠い関係ではない
最初の一文よりは確実に映像化しやすいでしょう。
このように実際に明記していない事でも読者に上手く情報を伝え、完成度を高めているわけですが、最初の一文のミスに気付いていなければ修正も出来ませんよね。

 そこで、書いた文章を逐一脳内で映像化していくのです。そしてできればその映像が映画館かテレビで放映されている所を想像してほしいです。
そうするとより客観的に自分の作品に足りない部分や、逆にいい部分が見えてきたりします。

で、これをやっていくと会話の部分でも、けっこうおかしなところが見つかってきます
この会話良いなぁ~、何て自己満足したままスクリーンで再生すると・・・あっ、これは学芸会の会話だわ、なんて思うこともしばしば。

自分の作品の映像化。これにより多くの発見が出来ますし、何より面白い。
執筆をしている方は是非お試しください。

ちなみに・・・
颯太というキャラは若い頃の妻夫木聡さんを内気に繊細にしたイメージで書いてました。
陽子は自由気ままで強気だが内面に弱さを隠した女性で、イメージした人は・・・内緒です。
恋愛小説ではなかったのですが、この二人の関係の変化は自分で書いていても面白かった。
没にしたのがもったいなかったかな。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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穏やかな暮らし


 お酒を飲みに行ったという記事を書いた翌日にこんなこと言うのもおかしな話ですけど、穏やかな暮らしに憧れ始めています。(以前にもこんなこと書きましたっけ)
夜の十時ごろにはベットに横になり、朝の八時ごろのんびりと起き出し、半分寝ぼけた頭でコーヒーを淹れる。私が穏やかな秋の空の下飲むなら、香り高いキューバのクリスタルマウンテンの豆もいいけど、やはりケニア産の深煎りを選ぶでしょう。タンザニアのキリマンジャロに比べればアフリカ系ではイメージは低いけれど、とても良質な豆で飲む者を唸らせるコーヒーなのです。深煎りにした際の香りや甘みの伸びが素晴らしく、それでいて安定した味わい。
 そんなコーヒーを淹れ、白い皿にポツリと乗った焼きたてのトーストを一口かじり、私はつぶやくのです。
「何はなくとも良い一日の始まりだ」 なんてアホなことを言ったりして
仕事も投げ出した私は、好きな音楽を流しコーヒーと小説を楽しむ。10時を過ぎ少し口寂しくなった私はキッチンに立ち、あくびをしながらイチジクの皮をむく。そして一口つまみ食い。

その後は読んだ小説の一文なりを万年筆で紙に書き起こし、どのような人生経験を得てこの本を書いた作家はその一文を生み出したのかと吟味する。
自分の懐に一歩近づいた一文の前後に、自分で考えた文章を重ねる遊びを、昼の軽食とともに行い、眠くなればソファに座りひと眠り。
午後三時ごろ目覚めた私は慌てることなく水出しコーヒーを淹れ、陽が落ちるまでの一息を満喫。
 それで夜ご飯を食べ、またゴロゴロする。本を読むなりなんなり自分の好きなことをして、気が向いたらパソコンに何か文章を打ち込む。
完全なグータラ生活ですけど、こんな生活に憧れもします。きっと忙しくなければそれはそれで寂しいとは思いますけどね。
でも一日の予定も何もない中で、自分で挽いたコーヒーにポタポタとお湯を入れていくのは楽しいだろうなと思います。

なんのこっちゃって記事ですね、すいません。

追記 今日は久しぶりにランチに行ってきたのですが凄く楽しかった。料理も美味しかったしお店も雰囲気も良かったのですが、何よりランチに行った相手が良かった。一緒にご飯を食べる相手が素敵な人だと料理はもちろんのこと、空気まで美味しくなりますよね。凄く充実した時間だったので明日もランチに行きたいくらいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月26日土曜日

私の癖


 昨夜は飲もうとの急な誘いがあり、すすきのに行っていました。
以前にも少し書きましたが、すすきのといえば私の元ホームタウン。悪いう噂もそこそこあったけれど最低限の常識と警戒心さえ持っていけば、誰でも楽しくお酒を飲める繁華街でした。
 
しかし今やすすきのは子供の巣。大人になりきれていない子供たちがウジャウジャ。
名探偵コナンの逆ですね。「体は大人。頭脳・知性・行動、社会生活で必要となる常識は一切持たない子供」的な人が客側はもちろんとして、店側にも増えたことにより私がすすきのに行く頻度もだいぶ減りました。
 それに……  これくらいにしておかないと知り合いの店から入店禁止をくらいそうなので止めておきます。

 それでもまだいい店は残っているので、私は昨夜友人たちとその一軒に行ってきました。その店はそれほど広くもなく薄暗いバーなのですが、お酒はもちろんの事フードメニューも美味しいものが多くお酒は進み楽しかったんです。しかし最近お酒を飲むと妙に疲れるんですよね 。年齢を重ねたせいもあるのでしょうが、私の場合どうしても人の動作に目が行ってしまう。それに今私はお酒が多く出てくる話を執筆中ですので、お酒に飲まれた人の動きは事情に参考になるのです。どんなシーンを書くにせよ引出しの数は多い方がいいですからね。

 バーカウンターで眠りこけるという定番の行動から、「ドア開かねーよ、この野郎」なんてトイレから出られなくなり叫ぶ白髪の男性など、酔っ払いの行動は多種多様ですがそのどれもが面白い。
そしてそんな光景を一つでも多く目に焼き付けようと神経を尖らせているからか、お酒を飲んで疲れるのが早くなりました。
 お酒を飲む場では小説の事は忘れて、とにかく楽しむべきだと悟った昨夜でした

最後までお読みいただきありがとうございました。

2017年8月25日金曜日

カバンにフラペチーノを

今日は読み物を一つ。
今回は美術品は使わずに、過去の偉人を登場人物にしました。
天才物理学者のアインシュタインと哲学者のデカルトです。
どうぞお楽しみください。





12月の明かりが照らすけやき坂のスタバの中、白い頭髪と白い髭を生やした男が、ふて腐れた様子でテーブルに戻って来た。彼の手には緑色の女性が描かれたカップが二つ。
「僕が君の分まで運んでくる理由がわからない」
デカルトは当然のことのように答える。
「私の方が先に何を飲むのか決定し、先に注文を終えた。カウンター前には多くの人が並び、少しでもスペースが空くのを待ち望んでいるようだった。どうやらこの街の人々は異文化の人間にだいぶ慣れてはいるようだが、それでも注文を終えた男が優雅にカウンター前に立ち尽くしていては腹も立つだろう。そのため私は君に整理券を託し、社会通念から外れない限り何をしていても許されるこの席に座ったんだ。それがあの場で私のとれる最善の策だった。まだ疑念はあるかね?」
「いいや、ないよ。もういい」
「それなら良かった。さぁ、君も座りなさい」
アインシュタインは椅子に座り、不快そうに顔をしかめる。
「まだ何か私の行動に不満があるのかな?」
「それは今の君の説明ですでに解決しているよ」
「では何故にそんな顔を?」
まるで我が家にいるかのように長い髪を手で梳かすデカルトに、アインシュタインは気弱な視線を向ける。
「この椅子、暖かいよ。きっとさっきまで誰かが座っていたんだ」
「それはそうだろう。これだけの人がいる店内で、この椅子にだけ誰も腰を落ち着けないと君は考えているのかね?空の上の誰かが、そんな小さなイタズラ心を働かせるとでも?」
アインシュタインは覚悟を決めたように椅子を引き寄せ、声を潜める。
「そんなことを言ってるんじゃない。誰かが去った後の椅子に座ることくらい気持ち悪いことは無いじゃないか。見知らぬ人と肌を合わせているような、そんな気さえしてくる」
彼の嫌悪感に対するいくつかの言葉が浮かんだが、それを飲み込みデカルトはただ笑っている。
「君は不快じゃないのか」
「気持ちのいいものではないかもしれないが、別に気にはならないな。人の数が多ければそれだけ人と接する機会も増える。それだけのことだ。そんなことで老いた顔を更に歪ませる君は、よほど自由に生きてきたのだろうな」
「座り心地の悪い椅子では数のパズルを解くことは出来ない」
「まぁ、それに関してはわからなくはない。私も数学に興じる種の人間であるから、君の気持ちも理解できる。自分に適した机と椅子があってこそ数学は楽しめ親しみを感じる」
言葉を終えデカルトはストローに口を近づける。この店を紹介してくれたアインシュタインのお気に入りだという、フラペチーノという飲み物。彼は何度もダークモカチップフラペチーノを頼むべきだとデカルトを促したが、注文を待つ列に並ぶ間に女性客がカウンターで不思議な色の飲み物を受け取るのを目にし、何かに引かれるようにデカルトも女性客と同じものを注文した。それがキャラメルフラペチーノ。飲食物の色彩的には中の下のような気もするが、落ち着ける場所のないこの世界で、心満たされる風味に出会うことに期待を寄せていた。良き飲食物と出会いは良き生活の出会いに等しい。だが唇がストローに触れるや否や、向かいに座る男の声が飛ぶ。
「あぁ、駄目駄目。デカルト君、それじゃ駄目だよ。君はスターバックスのフラペチーノの嗜み方をまるでわかっていやしない」
飲食の行為に入る直前で動きを止められることほど嫌なことは無い。デカルトの声は思わず大きくなる。
「君が何を言っているのか私にはまるで分らない。これは飲料なんだ。ストローまでしっかりと添えられた飲み物だ。それをストローから吸い出し口に運ぶことは間違いだというのかね?」
小さなテーブルにアインシュタインは身を乗り出し、周囲の陽気な客たちに聞こえないよう小声で話す。
「デカルト君、君は賢い人だ。だから人にあれこれと指図されるのは嫌かもしれない。それもストローで飲み物を吸い出すという、ごくごく簡単な動作についての口出しは非常に癇に障ることだろう。だけれど僕は人の間違った行動を黙って見過ごすことは出来ないんだ。ここの飲み物には最善の味わい方があるんだよ」
勝気なデカルトは湖面を揺らすように小さく笑う。
「面白いな。物理学以外でこれほど熱くなるなど君にしては珍しい。君の熱に免じてここは大人しく聞くことにしようか」
「それがいい。この世界に来てまだ短い君は、僕の言葉を信じるべきだ」
ふて腐れていたアインシュタインは急ににこやかになり、カバンの中を漁り始める。彼は整理整頓が苦手なのか、カバンの中という狭い世界ですらなかなか探し物は見つからないようだった。だがそれは仕方のない事。人は答えを探し出そうとすると必ず視野は狭くなる。ならば探し物も同様だろう。探すほど目当てのものは遠ざかっていくのだ。
 窓の外の青い光の中歩く人々を眺めていると、アインシュタインが子供のような声を上げた。
「あっ、あったよ。あったあった、やっと見つけた」
ようやく探し物を終えた彼の手にあるのは、日に焼けて古びたメモ帳だった。彼はそれをテーブルに置き、皺だらけの手でめくり始めた。
「忘れないようにここに書いておいたんだ」
「何をだね?」
「フラペチーノの嗜み方さ」
ため息をつくデカルトにアインシュタインは言う。
「僕のやり方をよく見ているといい」
「やり方ねぇ」
「そう、物理学に崩しようもない定理が存在するように、スターバックスのフラペチーノの飲み方にも定理が存在するんだ。ただスターバックスには愛好者が多いから、嗜み方の定理もいくつか存在し論戦は続けられているらしい」
「そんなことで論戦が?とても信じられないな」
「それだけフラペチーノは奥が深いのさ。フラペチーノの嗜み方で国交を断絶する国だってあるかもしれない。『君達は大きな間違いを犯している、我々の飲み方はこうだ!』とね」
会話を続けながらもアインシュタインはすぐにカップの上部に付けられていた半円形のフタを取り外し、ストローを袋から取り出した。
「なるほど、上に乗るクリームのようなものを酸素に触れさせるのだな。酸素によりクリームに大きな変化が起き、良質な味に変化すると」
「違う違う、答えを急ぎ過ぎてはいけない。腰を椅子に沈めゆっくりと問題に向かい合ってこそ、答えの神髄を導き出すことが出来るんだ」
アインシュタインは自慢気な表情でストローを使い、彼の注文したダークモカチップフラペチーノの上に乗るクリームを崩していく。一見下品にも見える行動だが、周囲の客たちに彼を嘲笑う様子はないことから、スターバックではこれはありふれた行為なのだとデカルトは納得し、彼の動きを真似て半分アイス上のクリームを崩し始める。だがそれも彼にとっては見過ごせない行為だったようだ。
「ちょっと待って」
アインシュタインの声にデカルトは手を止めた。デカルトのカップの中には晩年を迎えた老人の背中のように、崩れかけたクリームの山が一つ。溢れんばかりの哀愁が漂っている。
「今度は何だね」
「何だねなんて気取っている場合じゃないよ。君は今クリームを全て崩そうとしていた。だがそれはしてはいけない行為なんだ。君だって平地からどこまでも見渡せる人生など望んではいないだろう」
目の前に座る男が何を言っているのか理解できず、頭の上に今にも降りだしそうな灰色の雲が浮かんだ。フラペチーノ愛好者の老人は説明を続ける。
「哲学の世界で太く生きた君に人生を語ることは躊躇してしまうけど勘弁してほしい。平地を歩くような人生は安全だが、楽しみには巡り合えない。山や谷があってこその人生なんだ。山頂に辿り着き大地を眺める時の爽快な気持ち、谷から這い上がり陽の光を体中に浴びた時の澄んだ気持ち、それに誰も解けなかった物理史上の難題を説いた時の晴れ晴れしい気持ちと…」
言い淀んだアインシュタインの言葉にデカルトは続ける。
「頭を悩ませる相手がいなくなったことの物悲しさ」
「それだ」
アインシュタインは両手を広げ、自分の気持ちを素早く読み取った事への賞賛のポーズを見せる。
「山や谷があってこそ濃密で濃厚な人生が楽しめるんだ。喜びや悲しみを味わい生きていく。それが人生だろう」
アインシュタインのつたないが熱を持った言葉に、デカルトの心は緩みをみせていた。天才的な発想力と頭脳を持ったがゆえに不器用に生きた老人の明るい顔に、扉はきしむ。
「つまり君の言いたいことは、このスターバックスという洒落た店のフラペチーノという飲み物には、人生と同じだけの楽しみがあるという事かな」
「そうさ、そしてフラペチーノには人生の傍らに置いておくだけの価値がある。疲れた時や迷いがある時にお気に入りの椅子に座り、何度も読み返した文庫本を開きフラペチーノを飲む。それだけで人生は楽しくなるのさ」
哲学に対しそれほど深い見識を持たない彼には人生とフラペチーノの対比、いや、人生におけるフラペチーノの必要性を語ることは大変だったらしく、彼は大好物だという灰色のフラペチーノを吸う。
「ああ、本当に美味しいよ。ダークモカチップフラペチーノには美味しいという表現が一番合うな」
皺だらけの顔をほころばせアインシュタインは幸せそうに微笑んだ。人の表情を飾る博物館があるなら『幸せな時の表情』の標本には間違いなく今の彼の顔が使われるだろう。
可愛らしくさえ思える笑みを浮かべるアインシュタインの背中を、デカルトはそっと押す。
「では素晴らしいという表現はどうだろう?素晴らしいフラペチーノ」
フラペチーノ愛好者の老人は、物理を紐解く銀色の錆びた鍵を見つけたかのように手を叩く。
「その表現もいいね。だけれど『素晴らしい人生に素晴らしいフラペチーノ』よりは『素晴らしい人生に美味しいカプチーノ』の方が文学的に具合がいいと思うんだ。だから素晴らしいフラペチーノという表現はいつでも取り出せるように机の一番上の引き出しにしまい、美味しいフラペチーノという表現を使わせてもらってるんだ」
「君が文学的な視野を持つとは知らなかったな」
「数と真摯に向き合うには物理学的視点だけでは物足りない。必要ではないと思われる視点も取り入れてこそ数とわかりあえるんだ」
アインシュタインは笑みを浮かべたままデカルトのカップを見る、
「話し込んでいるうちにそろそろ頃合いだ。二回転と半分ストローを回しフラペチーノをかき混ぜるんだ。おっと、上に残ったクリームまで混ぜてはいけないよ。残りはゆっくりと崩しながら飲むのだから」
「それがスターバックスのフラペチーノの飲み方に対する、公式の見解なのかな?」
「公式な見解ではないよ。ただスターバックス愛好者たちの半数が押すフラペチーノの嗜みに、私が筆先で色付けした飲み方なんだ。大抵はクリームを全部崩し、ストローで強引に混ぜ込み飲んでしまうのだがね、私はまずクリームを半分崩し数分待つんだ。この数分がキモでね、注文したカップのサイズや店内の室温により適切な判断が必要となってくる。見極めが肝心なんだ。二分でいい時もあれば四分待たなければならない時もあるからね。そして時間がきたらストローでフラペチーノを二回りと半回転する」
デカルトは首を振る。
「本当に君はどうかしているな」
「よし、しっかり回したね。それじゃあ飲んでみて」
子供のように急かすアインシュタインに苦笑いを浮かべ、デカルトはストローに口を付ける。クリームと氷によって柔らかさを持った液体から甘いキャラメルの風味が口中に広がった。決して甘すぎることもなくキャラメルの潜在能力を余すことなく引き出した極めて優秀な飲み物に、デカルトは目を閉じる。
「どうだね?」
何故か自慢げな声を出すアインシュタインに、デカルトは瞼を開けうなずきかけた。
「君の言う通りだったよ。人類の英知が生み出した甘美な飲料が私の口内で踊り、鮮やかな羽を広げた。これは現代社会を生きていくには欠かせないのも物なのだろうな。人生を歩くのにフラペチーノは必要不可欠だ」
アインシュタインは今日一番大きな笑顔を見せる。入道雲が優雅に泳ぐ青空の下、草原の中を駆け回る少年のような透き通る清い笑顔。
「そうだろう。そうなんだよ、フラペチーノは常に僕らの傍らになければならないほどのものなんだ」
「本当に美味しいな。こんな飲み物があるなんて驚きだ」
「キャラメルフラペチーノでさえそれだけの味わいなんだ。私が頼んだダークモカチップフラペチーノなら、更に君を驚かせたことだろう。コーヒーとダークチョコレート、それにチョコレートチップとミルクが折り重なりあい、口の中で舞うかのような共演を見せてくれるのさ」
デカルトはもう一度キャラメルフラペチーノを飲み、顔を上げる。
「次にここに来たときは、君のオススメを頼んでみることにしよう。このキャラメルフラペチーノも捨てがたいがね」
「是非そうするべきだ。そして何度もスターバックスに通い、一番自分の人生に適したフラペチーノを選び抜き、そしてそのフラペチーノをカバンに入れ生きていくんだ」
「カバンに入れっぱなしにしていれば温くなってしまうし、そもそもこぼれてしまいカバンの中がベショベショになってしまうじゃないか」
斜めに顔を傾け、アインシュタインは片目を広げる。何とも皮肉な顔だが、彼の表情に嫌悪感を抱かせるものはなかった。大事な友人の得意げな顔。
「君は理屈に絡め取られているようだ。それではダメだよ。理屈の檻の中に居ては自由な発想など出来やしない。人生で常に携えるカバンに不可能などないよ。すべてを諦め光を失わない限り、いつでも冷えて美味しいフラペチーノを取り出せるんだ」
「それなら君はいつでもフラペチーノを楽しむことが出来るな」
隣の席に座る女性客たちが二人のフラペチーノ談議に笑う中、満足そうにダークモカチップフラペチーノを味わうアインシュタイン。
「デカルト君だって同じだよ。我々は生きている限りいつだってこの味を堪能できるんだ。一人ででもいいし、今日のように友人を連れてでもいい。穏やかな空気を吸い、フラペチーノが飲める。他に何が無くてもそれだけで十分に幸福じゃないか」
「物理が無くてもいいのかな?」
忘れ物に気づいたようにアインシュタインは目を開く。
「それは重大な問題だ。物理も加えておこう」
開かれたメモ帳にペンを走らせる彼の姿に、デカルトはつぶやく。
「君は生きているんだな、この世界を」
「そりゃあ生きているさ。心臓が動いていることが何よりの生の証明だろう。物理学の定理と同じだ。人の鼓動があるということは生きている証だ」
デカルトは下を向き、少なくなったキャラメルフラペチーノをストローでつつく。
「それは私も同じだよ。だけど君はこんなに素晴らしく美味しい飲み物を見つけたり、とにかく行動的だ。この世界に順応しようとせずとも、見事にこの世界に足をつけて生きている。それに比べ私はまだ馴染めずに凝り固まっているんだ。ここに私の居場所などない気がしてね。どうすれば君のように生きられるのか」
二本の揃えた指でこめかみをかき、アインシュタインは不思議な事を言う。
「まだ人類は宇宙の果てを観測すらできていない」
「どういう事かな?」
「ここまで文明が発展しても、世界は謎だらけなんだよ。私は謎を解き明かすことが大好きだからね、それが難問であればあるほど楽しみは沸く。デカルト君、私はこの世界でフラペチーノを机に置き難問に挑むことが楽しみで仕方ないんだよ」
デカルトの曇り空に薄日を差し込もうとするアインシュタイン。
「それならば私にできることも何かあるのだろうか」
「あるさ。この世界の人々は悩みを持つ人がとにかく多いから、デカルト君の力で救ってやることも出来るし、数学的にも結果を残してきた君の力はきっと私の謎解きにも役に立つ。だから手伝ってくれるというなら歓迎するよ。けれどそれでも足りないというなら、自分のすべきことを見つければいい。居場所がないなら自分で作ってやればいいんだ。本を読んでもいいし、映画を見てもいい。それに今はインターネットという世界中と繋がれる便利なものがあるから、そこから居場所を探してもいい。知ってる?インターネット?」
デカルトは恥ずかしげに笑う。
「知ってるさ。使う度にインターネットの利便性に驚かされ、昨日は部屋にwi-fiまで繋いでしまったよ」
「なんだ、やるじゃないか。私も最近インターネットでブログというのを始めたんだ。簡単に説明すればインターネット上に誰でも訪れることが出来る部屋を作れるんだ。コーヒーや食事で客人をもてなすことは出来ないが、記事を書きそれを読ませることで満足してもらうんだ」
デカルトはカップから手を離し、口元に手を当てる。
「それは凄いな。自分の部屋を作れるのか。それで君の部屋にも客人は訪れているのかね?」
「先週かな、アクセス数がやっと300を超えたんだ」
「300。凄いじゃないか、君の部屋に300人が訪れたという事だろう」
目の前に座る男は何故か頬を赤らめ、気まずそうに笑っている。
「そう思うだろう?」
「違うのかい?」
「インターネットとは本当に便利なものでねアクセス解析ということが出来るんだ。それで調べてみると、300を超えるアクセスは全て私のものだった。自分のブログを確かめようと何度も訪れていたからね」
デカルトは呆れ、天井を見上げる顔に手のひらを置く。
「酷い話だな。君は天才的な頭脳を持っているのに、そういうどこか抜けたところを持っている。それゆえ人から愛されるのかもしれないがね」
アインシュタインはダークモカチップフラペチーノのカップを一気に開けた。
「美味しかった。もう飲んでしまったよ」
「私もだ。君の言う通りフラペチーノという飲み物は最高だった」
「ダークモカチップフラペチーノなら君の喜びはもっと大きかったはずだがね」
「それはわかったから」
アインシュタインは口をつぐみ、デカルトはいつの間にか客数の減った店内を見渡す。
閑散とした店内に息苦しさはないが、かえって寂しさが目立つ。椅子に座る残された客たちの姿が、デカルトの目には帰り道を失った赤とんぼに見えた。彼らはこれから夜の都会の明かりに迷わず家に辿り着くことが出来るのだろうか。そして客たちの姿に自分を重ね合わせ、デカルトは不安の雲を背負う。
「これからどうする、もう遅いし帰ろうか?」
寂しさを感じたデカルトは帰ることを促したが、アインシュタインの返答は早かった。
「映画でも見に行こうよ」
「映画?」
「さっきも言っただろ、この世界での楽しみの一つさ。みんなで大きな画面の前に座り、映像に一喜一憂し胸を高鳴らせるんだ。これだって大事な人生の楽しみさ。映画を見ることは人生の蔵書を増やすきっかけにもなるしね」
帰ることを望んではいたが、友人の一言にデカルトは顔をほころばせる。
「映画か、それもいいかもしれないな」
「よし、行こう」
友人は勢いよく立ち上がり、デカルトもそれに続き席を立つ。
店の扉を開けると、街路樹が青い光でライトアップされ、それは天の川のように坂の上まで続いていた。立ち並ぶ高層ビルの下、青い光を放つ街路樹を見つめているとアインシュタインの震える声が耳に届く。
「なにやってるんだ、デカルト君。こんな所に居たら凍えてしまう。今からでも急げば上映時間に間に合うから、早く行こう」
振り返ると老いた友人は、震えながら白い息を手に吹きかけていた
「ああ、映画を見に行くんだったね。それで私達が見るのはどんな映画なのかな?」
寒さで顔を青ざめた友人はニヤリと笑う。
「スターウォーズ、人類が宇宙で戦いを繰り広げる映画さ。君は驚くぞ。映像の美しさはもちろんの事だが、我々の子孫が考えた突拍子もない発想にね」
「私にはついて行けそうにない映画のようだ」
「最高の人生の見つけ方やダヴィンチコードなどいくつか候補はあったんだけど、どれも古い映画のようで上映はされていないようだった。でも良かったよ、スターウォーズの最新版はまだ上映されているみたいだ」
デカルトも声を出す。
「私はスターウォーズという宇宙での人類の戦いの映画より、ダヴィンチコードという映画が見たかったなぁ」
口から出た白い吐息はけやき坂の冷気に紛れ、すぐに消えた。
「君は今日スターウォーズを見るべきなんだ。スターウォーズを見てこの世界を楽しむ活力をもらおうじゃないか。さぁ、行こう」
冷たい外気に身を震わせ、二人は歩き始めた。
「私はダヴィンチコードが見たかった」
「いや、デカルト君は理屈っぽいからダヴィンチコードは駄目」
「ヒドい言われようだ」
「すねてる暇はないよ。そんな暇があるなら楽しんで笑わなければ時間がもったいない。映画館へ急ごう。スターウォーズとキャラメルポップコーンが我々を待っている」
「キャラメルポップコーン?」
「そう、キャラメル好きの君はまたきっと驚くことになるだろう」
ゆったりと流れる車の列を横目に、デカルトは笑った。
「君といると眠る暇もなさそうだな」
「寝る間も惜しんで楽しみ笑う。それが人生の醍醐味さ」
楽しみ笑う彼らのカバンには一杯のフラペチーノ。
青い光に照らされ二人の背中は遠ざかっていく。この世界での居場所を見つけるために。
 足取り軽く映画館へ向かう二人の上、街路樹に粉雪が舞った。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月24日木曜日

絵画が語るファッション

 最近たまに行くようになった準セレクトショップでの話です。
一応セレクトショップとしての看板は出している店だが、店長自身が「ウチなんかセレクトショップじゃないよ~、せいぜいが準セレクトショップでしょう」と言っていたので、遠慮することなく準セレクトショップと言わせてもらいます。

 私はその店で自分がブログを始めたことを言った覚えはなかったのですが、どこからか聞きつけたようで(人の噂というものは怖い)たまにブログを読んでくれているらしく、私がいくつか上げた短編も読まれていて、嬉しいことに感銘を受けていてくれたようです。
で、その中でも気に入ったのが有名な人物画を使用した話らしく、「真珠の耳飾りの少女」や「夕べ」の女性や「青の背景の道化師」などを使い、売り出し中の商品の商品説明文を作ってほしいと頼まれました。
 その準セレクトショップには特徴的なデザインの服が多いので、商品を説明させるのはけっこう簡単だと思ったのですが今回はお断りさせていただきました。
またブログを見て下さっていたら大変なので理由はここでは書かないことにします。

 でもこの案はなかなかいい発想だと思いまして、自分のその日のファッションや気に入っている服の説明を美術品の人物画たちにさせても面白いかなと思ったわけですよ。
私は着物も好きなので和服を西洋の人物画に語らせてもいいかもしれない。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月23日水曜日

スタバのフラペチーノをどう表現するか


 私は表現に関して決して不得手ではないとの自負はあります。
溢れんばかりの言葉があるのですから、言葉を操る人間に表現できない表現などほとんどないはずです。
変な話、どんなに表現の下手な作家であっても、その下手な表現を取り囲む前後の文章、さらに言えば小説全体が高い完成度を持っていれば、誰もその表現を下手とは思いません。
下手に見える表現は洗練された手腕により、巧みに仕組まれた技法とも受け止められることでしょう。
 ですが私はまだ自信が無いので大事な場面での表現はもちろんのこと、小説の隅々に散らばる表現にまで神経をとがらせ書き上げていくのですが、私は今一つの問題に突き当たってまして、それが・・・

スタバのフラペチーノの味わいの表現! なんです。

私の中で今重大な問題となっているために「!」までつけさせてもらいましたけど、フラペチーノの味わいの表現が私にとってすごく難しいのです。
多分多くの方が一度は口にしたことがあると思うのですが、フラペチーノって凄く特徴の多い飲み物だと思いませんか。甘い、冷たい、美味しい、種類によってのフラペチーノの風味など、上げていけばいくつも特徴があるんです。
子の多くの特徴が織りなす風味を、フラペチーノを初めて飲む老人に何と表現させるか。
これで私は今悩んでいるのです。またその老人というか中年の後半に差し掛かる男性が特徴的な言葉を使いそうな人ですから、難しい。
この話はブログに載せようと思っている短篇なので、下手な表現を隠すイカサマが出来ないのです。私がアップした短篇をしっかりと読み込んでくれている方もいるので、おかしなミスも許されない。さて、どうしたものか。
 いくつか候補は浮かんでいるんですよ。ですがどうもしっくりとこない。銀だこのソースやマヨネーズの袋を切り口から上手く剥がせなかった時のような、「うわぁ、またやっちゃったよ」的な気持ちの悪さが残る表現ばかり。

『ダークモカチップフラペチーノ』と『キャラメルフラペチーノ』
重要なのはキャラメルフラペチーノの表現なのですが、これが意外と難しい。
職業柄どうしても文学的表現を追い求めてしまうのが、いけないことなのかもしれない。

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2017年8月22日火曜日

新しいメモ帳


 札幌は今日雨が多い日でしたが、時間を見つけて文房具店に行ってきました。
目当てにしていたのはメモ帳だったのですが、本日からセールということもあり店内はかなりの混雑でして見つけ出すのに非常に苦労しました。私の探していたメモ帳は人気商品なのか、そのメモ帳のあたりが常に混雑していたため商品に近づけず、時計を見ながらスペーズが空くのを待っていまして、人がいなくなった隙にすぐに場所を取り、サイズなどの違いがあるのでどれを買おうか迷い出したら…… 後ろに人の気配がしましてね。
 私だって待つだけ待ったのですからゆっくり商品を選んでやろうと思ったのですが、どうも後ろで人に待たれていると居心地が悪い。これは私だけなんですかね? そんなこと思ってないのかもしれませんけど、後ろの人の「早くしろよ、ボケ」的な空気を感じ取ってしまうんですよ。メモ帳を吟味しながらも「早くしろ…早くしろ…早くしろ…」という敵の声が頭の中で鳴り響き、しまいには「ウホン」という咳払いまでされてしまい、もう焦って手に持っていたメモ帳に決め、私の後ろで待つ男性に頭を軽く下げカウンターに走りました。

 それで帰宅し袋を開けてみると。やっぱりですよ。目当てのメモ帳ではあったのですがサイズが一つ大きい物でした。少しぐらい大きいメモ帳でも全然問題はないんですよ。でも結構な時間待っていたのだから私にも少しはゆっくりと選ばせてほしかった。きっと私の後ろにいたおじさんはこう思ってたわけですよ。「こいつ持ってなかったくせに人がいなくなった途端にきやがった。汚い奴だ」とね。確かに順番待ちをするなら後ろに並ぶのが正しいでしょう。ですけど文房具店のさして広くない店内でメモ帳を見る数人の後ろに立って待つとなると、私の背中で後ろの棚が見れなくなりますし、狭い通路も完全にふさがれてします。
猫の額ほど狭い店内で私は適切な待ち方をしていたのです。それなのに30秒くらい見ていただけで咳払いなんてね。(ワザとではないかもしれないですけど、多分あの感じは意図的です笑)

 それでこのメモ帳を何に使うかというと、日々頭に浮かんだことなどをすぐにメモし残しておくのです。「あっこんな言葉いいな」とか思ったらすぐにメモ帳を取り出し書き込むのです。そのためこのメモ帳は日々持ち歩くものですから、もうワンサイズ小さいものが良かったのですが、これも何かの巡りあわせと思いこのメモ帳に今後の作品に繋がる言葉やネタをたくさん書きこんで行こうと思います

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月21日月曜日

言葉遊び


最近言葉遊びが楽しくて仕方がない。
言葉を使い人と違う表現をすることは元々好きなのですが、ブルグを始めて一カ月が過ぎようやく肩の力が抜けて来たのか、ブログ内でもちょくちょく言葉遊びをするようになってきました。
何よりブログ内での言葉遊びは誰にも文句を言われないから楽しいのです。「え~、これちょっと違うんじゃない」や「この表現ダサくないかな」など上げ足を取るようなことを上から目線で言われないのがありがたい。
ここで一つ、没になった私の言葉遊びを紹介しましょう。

ゆっくりと歩いていたAさん。すると曲がり角にB君の姿が見え、Aさんは思い切り走り出した。←これが元々の文章です。で、こいつに私の言葉遊びを加えたものが…

静かに靴を鳴らすAさん。すると建物の陰に消えていくB君の背中を目に停め、Aさんは強く靴を鳴らした。←これ。

この言葉遊びの評価は「うん、ここ下手くそなのに言葉で遊び過ぎ。情景が伝わらないよ、これじゃ」と言われる始末…
いやね、彼の言いたいことはわからなくもない。確かにこの一文だけで見れば、遊びが強すぎるという見方も出来ます。ですがこれは前後にも文章が続いていてその中の一文だったわけですよ。ちょっとくらい言葉の角度や見え方を変えてみたっていいじゃないですか。
冴えない少年を美容室に連れていっただけですよ。←また言葉遊びだ笑 日焼けした程度に髪を染めて髪をさっぱりと整えてやったつもりでしたのに、彼は冴えないままの少年の方が好みだったようで、私の言葉遊びは×

こういったことがまず起きないのがブログでして、私は日々言葉で遊びながら楽しんでいるわけです。そのため読みづらいことや、解釈の仕方が分からないことがあるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月20日日曜日

ブログという樹


 個々の存在で見れば小さなものかもしれないが、日本だけでも数十万あるブログを全体で見ると、それは大きな木にも見えてきます。
ブログとブログが繋がり、その繋がりの輪にまた一つのブログが繋がり大きく高く広がっていく。未だに「ブログなんて」と鼻で笑う人もいますが、ブログをやる目的は様々でも、それぞれがブログ内で自分の書きたいことを書き、やりたいことをやる。そしてそんな思いに偶然ブログを覗いてくれた人が共感し、繋がりを作る。実際に顔を合わせたこともなく本名すら知らない人同士の繋がりなど、まがい物だと言われるかもしれませんけど、私はそんな堅苦しい考えはしたくないですね。社会には社会に合った繋がりがあって当然だと思いませんか。現代社会にはネットという便利なものがあるのですから、どこかに留まって同じ世界ばかり見ているよりも少しでも自分の視野を広げるためにブログをし、そこからの繋がりを作ることだっていいと思います。

 私もブログをやり始めて一か月と少し立ちますが、繋がりが出来てその中で多くの事を学ばせていただいてます。「なるほどこんな物があるのか、こういった趣味、活動をしてる人がいるんだ」と思わされる記事があったり、「ああ、こういう物の見方もあるのか」と思わず感心するコメントや、心温まるコメントをいただき、どんどん視野が広がってます。
新たな同士も出来ましたし。

 ですので私はこれからもブログを続け、ブログの繋がりが作る樹になる果実をついばみながら成長していけたらと考えているのです。人間学ぶことを止めてしまったらダメですからね。そして、私のブログにもいつか皆さんの身になる様な果実を実らせることを目指しているわけです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月19日土曜日

ブログという愉しみ


毎日ブログの更新を続けていくのは大変ではあるけれど、楽しさの方が大きい気がします。小説を書いていても、自分の考えなどってなかなか出しづらいものでして、鬱憤がたまることもありますから。今自分の伝えたい思いがあっても小説の中にそれを押し込むのもあまり好きではないし、それをしてしまうと話が破綻しちゃいますからね。

 例えばミステリー小説で連続殺人犯として光を当てている主人公が、何件目かの殺人を犯す際に「生きることは素晴らしいんだ。こんな土砂降りの日だって、雨の雫の冷たさを感じることも出来るし、傘に打ち付ける雨の音を楽しむことだってできる。物の見方さえ変えれば人生は楽しさで満ち溢れている。だから人は辛くても生きなければならないんだ」なんて切々と生の深さを語らせたら完全に話が壊れてしまいます。人の命を奪うことに悦を感じている男がこんなこと言ったら、根幹から話が揺らいでしまいます。花さか爺さんにヘリコプターで一面に広がる花畑に除草剤を散布させるようなもの。ヘリを飛ばす花さか爺さんの顔には厭らしい笑み。最低ですよね。

 というように小説には揺らいではいけない筋がありますから、そこに作家の思いを入れることは容易には出来ません。
ですがブログなら、いつでも自由に私の思いや考えだって書きこめる。そして時には酷い記事もあるでしょうが、そんな記事にも心優しい方々からコメントやメッセージが届くのです。本当にありがたいことです。そんな楽しみや喜びもあり、執筆に追われる中ではありますが更新を続けているわけです。そしてネットを通してでもいろいろな方とコミュニケーションが取れることも本当にありがたい。知らない世界、知らない見識が広がってますから。ですので本当にこのブログ更新は私の楽しみの一つになっております。

 飽きやすい性格の私ではありますが、このブログ更新は長く続けていきたいものです。
長く、長く。昨日も書きましたが笑いながら楽しんで、ブログを続けていこうと思っています。そして皆さま、コメントやメッセージが本当に励みになりますのでたまに気にかけて下さると嬉しいです。笑っていきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月18日金曜日

笑う事


 私は一日の多くの時間、笑っていることを心がけています。理由は簡単で、笑って生きる方がより多くの良い事と巡り合えるからです。ふて腐れて物事に取り掛かっても良い出来事何て起こりませんし、何よりつまらないですからね。
 人生という限られた短い時間を少しでも裕福に生きるのなら、取りあえず小さなことにでも笑うことが大事だと思っています。

 ですが常に笑っているわけではないですよ。辛い時や悲しい時には素直にその感情に従います。無理して笑っても意味はありませんから。ただ何の気なしに「つまらないな~」とか「いい事ないな~」とか「あの上司ムカつくな~」などの負の感情を抱えているくらいなら、思い切って笑っていた方が毎日は楽しくなってくるんです。

 笑ってやった事で何か失敗したとしても、笑ってやったのだから楽しんでやったのだからと自分を納得させることが出来るのです(そんなことで納得できる私が単純すぎるだけかもしれませんが)。

 そして何故か笑って取り組んだ物事には、成果に自信が付与される気がするんです。
全力で仕事に取り掛かりながらも、所々で笑ってやります。パソコンの陰に隠れてニヤッとしたり、トイレに行って鏡に映る疲れた自分の顔にニヤッと笑いかけてやる。
するとですね、自分の行動に自信が乗るのですよ。
「こんな風に書いたら添削されるだろうな~」「きっとこんな表現したら嫌がられるんだろうな~」とかビクビクした気持ちでいたら駄目なんです。
強く笑みを浮かべて「これが私の表現なんだ!文句あるならお前がこれを超える表現を出してみろ」と、気合を入れて書くわけですよ。キーボードの上で指を躍らせ、親の仇でも取るかのように書き上げていく。

 このように仕上げた作品には芯があるんです。読み直しをしていても文面から作者の自身が伝わってきて、少しくらいおかしな部分があっても変に納得できてしまうのです。
「あぁ、彼女の心情を表すにはこの表現でいいんだな」みたいな感じで。
その文章から作者の自身が伝われば、多少おかしくたっていいのです。それがこの人の表現なのだと気圧されてしまうような気持ち。
 これは仕事に限った話ではなくて、生活の中でも多く笑うことが大切だなと私は考えております。笑うことにより生きることが楽しくなりますからね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月17日木曜日

次の作品

 昨夜アップした作品・仮面に吹く風を読んだ方からたくさんのメッセージをいただき、大変ありがたい気持ちでいます。私などの作品で喜んでいただけると本当に飛び上がりたいほど嬉しくなります。
 美術品から構想を練った作品が続いていたので、次回アップする読み物はもう少し肩の力を抜いて書ける軽い話にしてもいいかもしれないなと思ったりしています。ですけれど美術品を持ちいた作品って結構評判良いんですよね。だから急にまた、さんまさんとか武さんを使った作品にすると「あ~なんだ、またさんまかぁ」なんて思われても辛いので迷ってます。

ですがなかなかいいと思うのですよ。
例えば、ぽつぽつと家族連れが歩きピクニックでもしている二子玉川の河川敷で、さんまさんと、そうですねアインシュタインにしましょうか。物理学者のアインシュタインが並び寝転がって話をしているのです。

さんま「やっぱり土曜の昼間は人が多いなぁ。俺人多いとこ苦手やねん。あんたは?」
アインシュタイン「悪くないと思うよ。人の数が多いほど知の幅も広い。ここにいるみんなで議論すれば何らかの未開の知に辿り着けるかもしれないよ。偶然同じ日に日向ぼっこをしている人間達で知の泉を見つける。そんなことが出来たならば、夕ご飯のテーブルには空っぽのワインボトルが何本も並ぶことになる。知を見つけた喜びに酔い、ワインに酔う。素晴らしい夜が待っているかもしれない」
さんまは陽の光に目を細め、隣で自分と同じように寝そべる髭を生やした老人を見た。手には駅前で買ってきたスタバのカップが大事そうに握られている。
「そんなスタバのカップ持ってアホな事言わんでくださいよ。それよりこれからどうするんです?蔦屋に行きたいみたいやけど」
アインシュタインはストローに口をつけ、カップに貼りついていた固形と液体の間のチョコレートを吸い出す。
「蔦屋に対する興味は大きいよ。でも私はここでもう一杯この『ダークモカチップ フラペチーノ』をここで飲みたいな」
さんまは頭をかき、呆れた声を出す。
「あんたね、それで二杯目なんですよ。しかも一番大きいサイズの。そんなに飲んでたらお腹壊しますって」
「心配はいらないよ。私はここで待ってるから早く買ってきてほしいな」
「えっ、僕が買ってくるんですか? 勘弁してくださいよ~」
「私はこの街の事をよく知らないんだ。だから頼んだよ」
「ったく」
ため息をつき、さんまは立ち上がった。
「じゃあちゃんとここで待っててくださいよ。あんた一人で動いたら迷子になりますからね」
「うん、ありがとうね」
 さんまは一人歩き出した。強い日の光に手をかざし、自分を指さす子供たちの間をすり抜けていく。あの老人の喜びを見ることは、悪いことではない。
 悪くはない休日の日差しに、さんまは薄く笑った。


五分ほどで書いたので出鱈目な酷さがありますけど、こういった話を書きたい自分もあり、人が待ち望む作品を書きたい気持ちもあり。ですが軽い話には軽いなりの良さがあるんですよね。
さて、次はどんな話にしましょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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2017年8月16日水曜日

仮面に吹く風

 本日は読み物を一つ。
また絵画を使わせていただいた作品です。
使用したのはヴェッファ作『青い背景の道化師』とカシニョール作『夕べ』、ピーテル・ブリューゲル作『バベルの塔』 そして前の作品で使わせてもらったフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』です。





 この作品は短いのですが多くの部分で悩んだ作品でもあります。そして作品構成を考える上で一つのルールも作りました。そしてたった一言を入れるか入れないかで二日悩んだ部分もあります。それらを明かした上で読んでいただきたいとも思うのですが、しかしそれを読む前に作者から開かされてもつまらないでしょうから、あえてここでは伏せておきます。
 私の作品を待ち望んでいてくれている人の存在も知り、急ごしらえで作った作品ですがなんとか形になりました。
 是非お読みいただき楽しんでいただけたらと思います。
コメントいただけたら幸いです。


      ・仮面に吹く風

「綺麗な風ね」
バベルの塔から吹く風が、大きな帽子で半分ほど隠れた女の髪を微かに揺らした。
強い風により繊細に揺れる女の髪を道化師はただ見ていた。
「ここがあなたのお気に入りの場所なのね」
「気に入ってはいないよ。ただあの塔を眺めるんだ。それが日常なんだ」
風は収まり、美しく揺れていた髪留めからこぼれた数本の黒い髪は、女の首筋をなぞるようにしなだれた。
 女が涼やかに眺める柵の外側には人間たちが神に少しでも近づこうと建設し、それゆえに神の怒りを買ったとされるバベルの塔が荘厳な姿で大地に腰を下ろしている。
道化師の父は宗教に没頭するタイプの人間であり、バベルの塔が持つ意味合いを幾度となく息子に教授したが、目の前の塔は道化師にとって人が人であることを認識するために作り上げた、壮大で美しく、それでいて空虚な塔に過ぎなかった。人間は神に近づこうとしてこの空っぽの塔を作り、いくら背伸びをしても人間は人間から抜け出せない事を知ったのだから。
「君にはバベルの塔がどう見える?」
女は少し考え口を開く。
「私とあなたは全く違う人間よ」
塔に対する意見を求められた女はこちらを見もせず、自分は道化師ではなくまともな人間だと主張し、言葉を続ける。
「あの塔は私達と同じ」
再び吹いた風に乗り、微かにフルーツの香りをまとった女の不思議な言葉が青の背景を持つ男に届いた。
「あれだけ大きな形で在りながら、あの塔は一人ぼっち。きっとあの塔が世界の真ん中にあったとしても、それは変わらないわ。世界の真ん中という隅に居場所を見つけてしまう塔」
「世界の真ん中の隅か。そこからは何が見えるんだろうね」
女の足が二度地面を蹴った。
「ここと同じよ。青い空を眺めることが出来るわ」
「その青い空はどんな表情をしているのだろう」
落下防止用の柵に手を置き、背を伸ばす女。その背中は心配になるほど華奢だ。
「世界の隅にいるんだもの。そこの空はのどかで穏やかに決まってるわ。その青い空を飛ぶ鳥たちが自由気ままに線を引くのよ。豊かな生命の証」
「ここの空は?」
「青色だけど穏やかではないわ。欲望が滲み出てる」
男は前を向いたままの女に一歩踏み寄る。その気配を察したのか、女は大きな帽子をさらに深くかぶった。その様は10月の末日に黒猫とカボチャのお化けを引き連れる魔女を思わせた。目を細め男は言う。
「人は自分の生み出した欲望に簡単に操られる。自分の器には到底収まりきらないほど大きなものを望み、空を汚し、命を奪う」
「どこまで行っても欲望に塗れたままか。つまらない人生ね」
「それが人間だろう」
帽子の魔女は気の向くままに振り返った。大きな帽子の影となり表情は確認できなかったが、整った輪郭と口元、鼻先、白い肌からこの女性は強い美を兼ね備えていることを男は感じた。触れたくなる美に心を落ち着かせ、静かな湖面に一滴の雫を落とす。
「目の前に太く座るバベルの塔だってそうさ。人間たちが神に近づこうという欲望を持ち、あそこまで築き上げ、それにより神の怒りを買い言葉を乱された。私達が使っているこの言葉すら、世界中に散らばった多くの人間達には理解できないんだ。憐れで笑えてさえくるよ。結果、神を目指した人間たちは、自分の思いすら満足に伝えることが出来なくなった」
女の唇の両端がゆっくりと上にあげられた。どうやら女は笑ったようだ。
「あなたもその愚かな人じゃなくて?」
「私は違う」
「あら、どこが?」
男は視線を強め笑って見せる。全てを悟ったかのような道化師の不敵な笑み
「見ればわかるだろう。私は道化師であり人ではない」
女は手に下げたバッグから小さな瓶を取り出し、その中の色とりどりの乾燥した果物の中から乾いたオレンジを取り出し尖らせた唇でつまんだ。生き生きとした薄い唇で渇いたオレンジを上下に動かす様は、南国の大樹から熟した果物をついばむ鳥を思わせた。世界中を飛び回ることが出来るのに、世界で起きている問題など目にも留めない優雅な化鳥。
 緩やかな風が一つと半分吹く間だけ女は口先でオレンジをもてあそび、生命の循環を補わせるためか、もしくは乾いた果物の味を楽しむためか、口内に放り込み喉に通した。
「あなたは人間よ」
バベルの塔から吹く風に、今度はオレンジの影が感じられた。
「よく見なさい。私のどこが人間だというのか」
「先から先まで。あなたには羨ましくなるだけの人間らしさが溢れているわ」
女は笑い言葉を続ける。
「おかしなメイクをして、禍々しい背景をぶら下げてはいるけれどね」
「それこそが私が道化師である証明なんだ」
女は再びバベルの塔に向き直り、黒く大きな帽子を上げた。
「綺麗な空気ね」
世界の果てまで広がる青空の一部になったかのような女の背中に男はうなずく。目の前の青空とは違う、禍々しい青の背景を背負ったまま。
「少し歩かない?」
「何故?」
「理由なんてないわ。あなたがここに立つ理由は?」
「特にないな」
「じゃあ歩きましょう」
振り返った女は初めて確かな笑顔を見せた。夕暮れが迫る空のような少し寂しげな笑顔。
返事も聞かずに歩き出した女の後を男は追う。一人佇みバベルの塔を見下ろすことは、今日の道化師には憐れな行為に思えた。そう、神に近づこうと決死の思いでバベルの塔を建てた人間達と同じ憐れな行為。
 草を強く踏み、追いついた背中に男は声をかける。
「君はいつもこうなのか」
「こうって?」
「君を怒らせてしまうかもしれないが、君は自分勝手だ。いや、この言葉は適切ではないな」
男は防止の丸い影を踏める距離で速度を落とした。女と並ぶよりは賢い選択と男は自身を納得させる。
「自由奔放だ。あるがままに生きている」
「そうやって生きるのが人間なのよ」
「ならば君の行動は私には理解できないはずだ」
草の上に転がる小石を、細く長い足で女は空に飛ばす。憐れな小石。多くの石の中に埋もれていれば蹴り飛ばされる必要などなかったろうに、緑の布団の上で一人日向ぼっこなどしているから意味もなく宙を舞う羽目になったのだ。
 何の気なしに女に蹴り上げられた小石はすぐに速度を失い、バベルの塔が仰々しく座る柵の外側に落ちて行った。自分と似た小石の行先を目で追っていると、いつの間にか女は立ち止まっていた。
「あなたは道化師だから?」
「そうだ。人間の事は道化師にはわからない」
整った美しい顔を、女はわずかに横に傾けた。
「何故あなたはその道を選んだのかしら」
「私にもわかるように言ってくれないか?」
「何故、道化師になったの?」
道の先に広がる木々の通路から緑色の香りが漂い、男はそれを小さく吸う。
「おかしなことを聞くね。君が人間であることと同じだよ。私は道化師だから道化師として存在しているんだ」
「道化師だって元は人間でしょう。この世に導かれた瞬間から道化師なんてことはあり得ないわ。どんなに賢い猿にだってあなたのように道化を演じることは出来ない。人間しか道化師にはなれないのよ」
道化師が黙ったままいると、帽子の女は言葉を続けた。
「どんなに演じることが上手い道化師でも一枚皮をはがせば中身は人間よ。あなただってそうでしょう」
「違うよ、私はただの道化師だ」
「あなたは賢い人だもの。自分が何者であるか気づかないわけがないわ」
「私に賢さなどないし、それを持つ必要もない」
女は呆れたように大きく首を回した。
「真っ白なカフェの中であなたは私に語ってくれたじゃない。バベルの塔についてあなたのお父様から聞いた話に、自分の見解を織り交ぜて切々と。あなたの話は面白かったし、それに美しさもあったわ。私はあなたの大きなバスケットから溢れ出るほどの知識に魅せられたのよ」
道化師日は顔を上げ空を見る。
「あの時の君はふて腐れたようにさえ見えたから、私の話は君にとってよほどつまらないものなのだと思っていた」
「つまらないのなら、あなたと一緒に塔を見になんか来ないわ。あれはあなたと話をする前に数人のつまらない男達から声をかけられて、うんざりしてその流れを引きずっていただけ」
「私との対話時にまでその流れを引きずっていた。つまりそれは、ふて腐れていたという事ではないのかな」
大きな帽子の下で女は笑った。
「そうね、あなたの言う通りよ」
華々しい笑顔に男の心は微かに揺れ、奇抜なメイクを施した顔に手を当てた。厚く塗りたくったメイクの乾いた感触が指先に触れ、男はすぐに手を離す。

 新緑の木々の通路に入り再び帽子の女の後を追っていると、通路の向こうから一人の少女が歩いてくるのが見えた。少女は青いターバンを巻き、耳には真珠の耳飾りを付け、青空に照らされた生命の香りがする木々の中を静かに歩いてくる。身なりも変わっているが、それ以上に言葉では表せない不思議な空気を持つ少女だった。
 帽子の女もそれに気づいたようで、女の薄い背中に緊張が走ったのが道化師にはわかった。それでも女は警戒した様子は見せずに、青いターバンの少女に声をかける。
「こんにちは、今日はいい天気ね」
大人びた様子の少女はうなずいた。そのたった一つの動作には、幼いながらも品性の良さを感じさせるものがあった。少女の耳で揺れる真珠のように光ろうとせずも光る品性。
「どこから来たの? 今日は一人?」
青いターバンの少女は、木々の枝や葉が重なり緑の天井と化した頭上を指さす。
「この綺麗な緑の輪の先にあるカフェにいたの。一人でね。私は人と話すのが好きだけれど、こうやって一人で歩くことも好きなの。心を高ぶらせることなく、豊かな自然の一部のような気持ちで歩くと、心のどこかに隠されていた自分自身と対話できる気がするの」
透き通った声が鳴らした言葉には知性も感じられた。少女ではなく大人の女性であるのかもしれない
「素敵ね。あなたと隠れていたあなたが対話をするなら、きっと素敵なことが起こりそう」
「ありがとう。私ね、心の中で私自身にもハーブティーを淹れてあげるの。ラベンダーやローズマリー、その日の気分で淹れる種類は違うけれど、いつでも柔らかで優しい香りが私達を包み込んでくれるのよ」
言葉をほんの数回交わしただけで大きな帽子の女の背中から緊張感は消えていた。この少女は人の心に安らぎを与えるハーブの精ではないかと道化師は思う。
高い腰を少しかがめ、少女と視線を合わせた女は楽しそうに聞く。
「香りに包まれたあなた達はどんな話をするの?」
心に温かい毛布を与える少女は笑った。その表情には大人びた容姿や言葉遣いに隠された、子供の顔が透けるようだった。
「そうね、この数日の間に心の外と中で起こった出来事を話し合ったりするの。こんなに面白い本があったのよとか、凄く美味しい紅茶を見つけたのとか、酔っ払いのおじさんが素敵な詩を歌っていたって教えてあげるの。すると心の中の私が教えてくれるのよ」
帽子の女は楽しそうにうなずいている。
「私がその面白い本を見つけた時、心の中ではこんな変化があったのよ。美味しい紅茶を飲んだ時も、酔っ払いのおじさんの詩を聞いた時にも心の中はこんなに輝いていたのって。どれだけ小さくてもいいから生きていく喜びを感じることが大事だと、心の中の私はいつも教えてくれるの。だから私の心の中の引出しには素晴らしい思い出がたくさん」
女は青いターバンの少女に、鼻先が触れるほど顔を近づける。
「素敵な話をありがとう。あなたのおかげで私の心に黄緑色の鳥が飛んだわ」
「黄緑色の鳥?」
「そう、か弱い黄色を緑色が優しく包み込んだ美しい鳥。幸せを感じると私の心にはその鳥が飛ぶのよ」
青いターバンの少女は至福の笑顔を見せた。
「こちらこそありがとう。それじゃあ私そろそろ行こうかな」
「ねぇ、これからお姉さん達ともう一度カフェに行かない? あなたともっと話がしたいわ」
少女は小さく首を振り、その振動で耳飾りが揺れ木々の隙間を縫い届いた陽の光を弾く。
「あなたたちは二人で行った方がいいわ。今日はきっと私はお邪魔」
「そうかしら」
青いターバンの少女は笑みを崩さぬまま道化師を見る。何故か内心をくすぐられている気がして道化師は少女から目を離す。
 二人の様子を見ていた大きな帽子の女が、その場を取りなすように口を開く。
「おかしな顔してるでしょう、この人。こんな厚塗りのピエロみたいなメイクしてね」
帽子の女の言葉に少女は遠慮することなく首を縦に振る。
「ね、こんなメイクやめればいいのにね。でもねメイク落とすのは嫌なんだって。『これが道化師の証だ』なんて言うのよ」
「私もやめた方がいいと思うわ」
少女の返答は早かった。
「でしょ、絶対やめた方がいいわよね。あんなメイク」
少女は防止の女から離れ一歩二歩と道化師に近づいてくる。そして道化師が恐怖を抱く手前の距離で足を止めた。
「お兄さん、仮面をつけてまで笑われるのなら、素顔で笑われた方がずっといいわ。人が人として生きようとして、そんなあなたを笑う人達なんて最低よ。それならあなたも笑い返してやればいいわ。笑われてもけなされても、あるがままの姿で生きるの。そして心許せる人達と美味しいものを食べて笑い合うの。そして優しい香りと味の紅茶を飲む。きっとその方がいいわ。うん、その方がずっといい」
帽子の女は何も言わず後ろから少女を抱きしめた。
「素顔のあなたはきっと素敵よ」
その場に立ち尽くしたまま、道化師は口を開く。
「そうだろうか」
「ええ、きっと」
木々の上で鳥が鳴き、それと重なるように仮面のひび割れる音が聞こえた気がした。
 ゆっくりと緑の通路を歩き始めた少女。その背中に帽子の女は声をかける。
「今日はありがとう。必ずまた会おうね。その時こそお姉さんがカフェで好きな物おごってあげるから」
優しい笑みで少女は振り返る。
「必ず、約束ね」
短いが信頼のおける言葉を帽子の女に渡し、もう一度道化師の目を見つめる。深く静かな水晶玉のような瞳。
「あなたなら大丈夫。次に合う時にはあなたの顔で笑って見せて」
その言葉を最後に再び歩き出した青いターバンの少女を、二人は黙って見送った。涙の雫のような真珠の耳飾りを揺らす少女の背中が見えなくなるまで、ずっと。すべてを受け止めるかのような世界の真ん中の隅を思わせる空の下、耳には鳥たちの鳴き声が届き、深々と揺れる木々の中には自分の素顔を覗いてくれようとする女性が一人。
男は安らぎに触れた気がした。
 青いターバンを巻いた不思議な少女を見送り、二人は木々の通路の先にあるというカフェに向かい歩いていた。男の隣を歩く帽子の女は、木の枝の先に実る果実に目を向け突然小走りを始める。
「おい、どうした」
男の声が聞こえないかのように女は走り、「ごめんね」と言い枝から濃い赤色の果実を切り離し、大きく噛った。果実を口に含んだ女の口元からは透明な果汁がみずみずしくこぼれ出していた。
 女は半笑いを浮かべ、大きく欠けた果実を男に差し出す。どうしていいか困惑していた男を見て女は「あ、嫌だよね」と、気など使う必要はないのに果実を割ろうとする。その行動に男も笑い、女の手から太陽のように赤い果実を奪い取り、女の歯型が残るその上からさらに大きく口を開き噛り付く。口の中に甘酸っぱい生命の味が広がった。
「意外だった」
帽子の女は微笑み男を見ている。
「何がだ?」
「あなたの事だから、子リスのように食べるのかと思ってた。削る様に果物を食べる姿も見てみたかった」
「うるさい」
男の腰に女の小さな拳が埋め込まれた。
「でもなかなか野性的でよかったよ」
「うるさい」
二人の歩く木々の通路の先には強く光が差し込んでいた。どうやらあそこでこの通路も終わりらしい。目当てのカフェも近いようだ。帽子の女は聞く。
「気分はどう?」
「気分か。そうだな、悪くはない」
男は随分小さくなった果肉を口の中に放り込んだ。
「美味しかったでしょ」
「ああ、とても」
「あの果物ね、昔私が住んでた家の周りでたくさん生ってたの。庭に出ると果物と花の香りがして、空気がとても綺麗だったんだ」
女の言葉を紡ぎ合わせ、男は頭の中で女の故郷を想像する。涼やかな風が吹く中、庭を駆けずり回る一人の女の子と果実や花の香り。女の子を見つめる農作業中の両親の穏やかな顔。いつまでも続いてほしい穏やかな光景。
「きっといい所なんだろうな」
「今度案内してあげようか?」
「私を?いいのかい」
女は腕と背を伸ばし、吹き抜ける風のように微笑む。
「何よ、一つの果実を分け合った仲じゃない」
照れを隠すため男は微笑みから目を逸らす。
「そうだね。ありがとう」
 木々の通路を抜けたところには広場があり、散らばる様にベンチが三つと、子供が置き忘れていったのかサッカーボールが一つ、そして水飲み場。その広場の奥に木造のカフェが一軒ポツンと建っていた。二人の頭上には抱き留めたくなるような青空。男は空を見上げ一人笑った。
「いい機会かもしれないな」
「ん?何が」
空に向けた笑みと同じものを髪を抑え風に吹かれる女に見せ、男は水飲み場に向かい頭から冷水をかぶった。そして手の平で強く、乾いた顔をこする。一分ほど水を出し続けた後、男は自分の服で顔を拭き、退屈そうにサッカーボールを蹴る女の前に立った。
 数秒男の素顔を見つめ、女は笑顔で深く頷いた。
木造のカフェに向かい、並び歩き出した二人を撫でるかのように風が吹いた。
「綺麗な風ね」

                                芝本丈

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2017年8月15日火曜日

望むこと


 私は31歳なのですが、ここ最近自分の願望が移り変わっていくのが分かりました。
私は若かりし頃は多くの幼い願望を抱え、自分が人よりも高い位置にいたいと願うところなどは人一倍強い人間だったと思います。人より裕福でいたい、人より名が知られていたい、人より人より人より… ですがまぁこういった子供っぽい願望は高校を卒業するころにはだいぶ削ぎ落とされ、大学に行き自分より優秀な人間を目にするようになり、現実的な視野はだいぶ広くなってきました。それでもまだ何かやってやろうとか、形のない雲のような願望は持っていたわけですが、全ての願望をまっさらに消す機会が私にもありました。

 私は大学3年時に命にかかわる大病をし、私の先にあったはずの望みや希望は全て消えてなくなりました。人生の終わりを感じるほどの大病。事実これにより今までの私は消え去り、命という光に縋りつくだけの存在となりました。これまで望んでいた明るい未来などなくてもいい、ただ生きてやると。生きて私を支えてくれている家族の元に戻り、一緒に暮らす。それ以外の望みはもう私にはありませんでした。

 その後の事は省かせてもらいますが、病気を完治させ数年後には何とかまともな暮らしをできるようにはなり、恐れていた再発の傾向もみられず、また私は小さいながら望みを持つようになりました。そしてその望みのうちのいくつかは何とか叶えられ、その後もいろいろとあり今の私があるわけですが、年齢もあってか願いの形も変わってきましてね。

 もちろん今の私にだって、もっと裕福に暮らしたいとかそう言った気持ちはないわけではありませんが、今の私の一番の望みは穏やかに暮らすこと。
好きな小説でも書きながら静かに暮らしていきたいという思いが一番強いですね。
笑い合って楽しんで、その中で私の生きた証を世に残したい。病気が再発しないとは限らないのでね。とにかく爪痕でも何でもいいからこの世に形跡を残してやろうと。小説を書くことは大好きなのですが、そう言った思いがあることも否定は出来ず。
 とにかく病気の再発や新たな病気に襲われることも絶対になく、のんびりと穏やかに暮らして行けたらと私は思うのです。

追記 その暮らしの中で昨日書いたFree booksみたいなこともやりたいんですけどね
そして読者の皆さんが目をむくような超人気作も書いてみたいのです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月14日月曜日

出来れば挑戦してみたいこと

私は集団行動の苦手なタイプですが、そんな私らしくない夢というか希望を持っております。
小説という形でなくても構わないから、複数人で一冊の本を仕上げてみたいという夢です。
本が好きで文章を書くことが本当に好きな人だけを集めて、一冊の本を仕上げる。
 そんなことがいつかできたらいいなとは思いますが、きっと無理なこともわかっております。
社会という時間に縛られる世界で生きている以上、そんな本好きで文章好きな人が複数人集まり、どのような本に仕上げるか打ち合わせをし、それぞれの考えなどを考慮しながら一冊の本を仕上げることなんか出来ませんよね。
みんな住む場所だって違う訳ですし。それなら近くにいる者同士で作ればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、私はそういう妥協が苦手でして。結局妥協を重ねるごとに、本の価値って落ちていきますからね。例えば○○文学賞に応募しようと決意を固め、自分の書きたい作品を書こうと思っても、その文学賞の過去の受賞作の傾向や、審査員・出版社の好みを考え、皮をはいでいかなければならない。それで気が付くと完成した小説は自分の作品ではなく、○○文学賞に評価されるためだけの薄っぺらい作品になってしまう訳です。
 だから私は日本中からガチガチの文章遊びが好きな人だけを集め、本を作ってみたいのです。夢ですね、夢。
でも素敵なことだと思いませんか?
アホな事言ってると笑われるかもしれませんが、プロアマ問わず本当の本好き、文章好きが集まり一冊の本を制作する。ビジネスから視点を逸らすなら、中には小説があってもエッセイがあってもいい。『Free person Free books』みたいな気軽な感じで、だけど本気で。
 そしてここでまた問題が出てきますよね。
そうです、出版するのならやはり収入が欲しい。
となると、やはりビジネス視点で物事を考えなければいけないわけでして、ここで必要となって来るのが広い視野と経験を持つリーダーです。集まった複数人をまとめ、購入されるだけの価値ある本に仕上げ、各所に本の営業に回る。「社長さ~ん、この本隅っこでもいいから置かせて下さいよ~。絶対利益になりますから~」みたいな感じですかね。
これは私には無理。
まだ営業とかならできるかもしれませんが、ロンリーウルフならぬ広い海に一匹でプカプカと浮かぶロンリーラッコのような私には、人などまとめられません。自分の事で精一杯ですから。美味しい貝を見つけ、コンブに巻かれて食べてるのがお似合いかな。

 ですが無理無理言っていても仕方ない。やってみることに価値があるのです!
と、意気込んではみましたが私も仕事に追われる身。はい、大人しく仕事に戻ります。

でもですよ、しつこいですけど、いいと思いません?
添削など辛い思いもするでしょうが、プロアマ関係なしに短篇小説を書いて集めて、短編集として発売するなんてのも。
大人だってアホな夢くらい見たっていいじゃないですか。

ちょっと意味不明な記事になってしまいましたが、最後までお読みになっていただきありがとうございました。
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2017年8月13日日曜日

小説を書く熱量

 昨日の記事の続きのような話になりますが、熱を持って小説作成に取り掛かれないようでは小説家への道は厳しいでしょう。ですがその一方で熱を込め過ぎて小説作成に取り掛かると、手直しの際にえらく手間取ることになります。
そのため以前の私は作品への熱を押し殺し、冷静な目を持ち作品制作に当たった時期がありました。
それで結果としては、読み直し後の手直しも少なく済み、手早く順調に作品の完成に至ったのですが、なんとも冷たい小説になってしまいました。

 その小説の内容としましては、重い過去を背負った裕福な老人が偶然出会った若者と、丸の内の仲通りで悪戦苦闘しながらもカフェを開き切り盛りしていき、その中で老人の暗い過去が明かされ、その原因と関係のある人との出会いにより老人の重しは取れ、その老人と関わることになった主人公の青年がカフェの開業、経営、老人の苦悩を通して成長していくという話だったのですが、手直しを終えて完成した小説を読み直すと全般を通して冷たさが伝わってくるのです。
暗さなどの陰の冷たさではないのですが、最後には暖かい空気で終わる話なのにも関わら
ず冷めた空気がどうしても作品から感じ取れてしまい、自分の思った読感(これは私の造語
ですが読み終えた時の感想とでも理解してください)を持たない作品を世に出すことも出
来ず、今もその作品は私のパソコンの中に眠っています。
この作品の失敗としては間違いなく、私が作品に対する熱を取り払ったことにあると思い
ます。手直しなどの細かい作業を臆するばかりに、冷めた視点で作品を書き上げてしまった私の失敗でした。
読み直した時に臭いセリフなどがあり顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしても、手直
ししなければいけない部分が無数にありうんざりしたとしても、熱を持たずして小説作成
に臨むことは間違いであると私は思います。

 小説を書き上げる際には作品を冷静に見通せる目も大事だとは思いますが、やはりそれ以上に大事なのは良い作品を生み出そうという熱なのでしょう。
矛盾する言い方ですが、熱を持ってこそ読者を芯まで冷やすような作品も生み出せるのだ
と思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月12日土曜日

書き上げから読み返すまでの間


 新しい話に取り掛かり、調子のいい時なら一月もあれば400字詰め原稿用紙で500ページくらいの長編小説を書き終えることは出来ます。
そしてここからすぐ原稿を読み直し、手直しに入る作家さんもいらっしゃいますが、私の場合は手直しまでに最低でも二週間は開けます。
理由は簡単で、一度作品を書き終えてからその小説から離れている時間が長いほど、自分の作品を客観的に見られるようになるのです。
かつて一月半ほど期間を開けてから原稿を読み直した時は、もう恥ずかしいやら情けない
やらで全ての原稿を破り捨てたくなったこともあります。
結局最初に小説作成に取り掛かる時は気持ちを強く入れ込んでいるため、どうしてもアド
レナリンのような興奮物質が出るようで、もう人様にはとても見せられないような文章な
のです。
 読んでいるだけで、自分の熱や上手く見せようという意気込みが伝わってくるんですね。
上手いセリフを言わせようとか、読者があっと驚くような展開に持っていこうとか、ミステリー小説を書いているのに妙に恋愛要素が強くなってしまったりとか、自分で書いたものを読んでいるので当然のことかもしれませんが、もうあらゆる意図が見え見えで吐き気をもよおすことすらあります(本当に)

 そのように、新たに制作に取り掛かった作品を初めて読み直す際には、かなり辛い思いをすることが多いのですが、そのように作品の粗が見えるのもある程度の期間、自分の作品から離れていたからなんです。

私は単純な人間なので、書き上げてからすぐに読み直してしまうと「おっ、これなかなかいいんじゃね」「この表現上手いね~」なんてアドレナリン全開で作品に同調してしまいますから。

 心を落ち着かせていかに巧みに作品を書き上げようが、最初の原稿にはどうしても粗が残ります。私は水晶玉のように綺麗に整えられた作品よりは、多少は粗の残っているような作品が好みではありますが、さすがに粗が残りすぎていると読者に不快感を与えてしまいますからね。
 ですので作品が上手くまとまらないという方は、作品との睨めっこはやめて一度離れてみることも大事だと思います。
そうすることで作品の粗だけではなく、今まで気づかなかった自分の作品の良い点にも気づくことが出来るかもしれませんよ。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月11日金曜日

小説を書き進める空気


 小説家という仕事は己の心身と誠実に向き合わなければならない仕事です。
適度に整えられた体調の時ほど、キーボードの音はにぎやかです。
そこに自分が小説を書くに適した空気がある時には、一度で自分が納得できる文章を書けます。
そのような時は体の奥から言葉が湧き出てくるのです。まだこの世に出したばかりで削りもしていない言葉でも、原稿用紙に転がした言葉たちは艶やかさを持っています。
 そして不思議なことにそういう言葉たちは、幾度の手直しをしても原稿用紙の中に残り続けます。
意図して残したわけではありません。
徹底した手直しをしていくにつれ、言葉は輝きを増し、小説の中になくてはならないものになっていきます。先の世界で大樹になる芽が私の小説に根差したかのような感覚。
小説でなくても何か書き物をされている方なら、この感覚を味わったことがある方はいるでしょう。
それが世の風、社会や人の風に吹かれ、どのような評価を受けるかはわからなくとも、自分の小説に深く根付き、根幹となる大切な言葉。
 そのような言葉を生み出しやすくなる空気は時に訪れてくれるもので、私の場合その空気に出会える機会が多いのは、これから始まるお盆シーズンなのです。
理由はわかりません。
ですが、なんだかお盆の時期というのは特別な空気を感じませんか。霊的なものは私には良くわかりませんが、何とも言えない静かで厳かな空気がありますよね。
心身の奥まで透き通るかのような、心地よく涼やかな風が乾いた心に吹くような。
この感覚をうまくは説明できませんが、私はそう感じるのです。
 そしてその空気が懐にある間は、上手くやろうとせずとも形の整った言葉は生まれます。この空気があるうちにと、私は毎年この時期はいつも以上に長い時間、パソコンと向き合う訳です。
仕事のためだけではありません。この空気の中で宙に浮かぶかのような言葉たちと戯れることも、私の大好きな遊びの一つなのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 皆さまの応援のおかげで本日とうとう人気ブログランキングの小説家部門で1位になることが出来ました。本当にありがとうございました。そしてどうぞこれからもよろしくお願いします・

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2017年8月10日木曜日

小説を書く楽しさ

 私は以前小説を書く楽しさを問われた時に口ごもってしまった覚えがあります。
楽しさならたくさん知っているんですよ。楽しさを知っているからこそ、この仕事をしているのです。
私自身が幼いころから話を創造したり、それを紙に書き綴るのが好きでしたから、その中で多くの楽しみを見つけてきましたから。
 しかしこの質問を投げかけられた当時はスランプの中のスランプで、パソコンの前に座り続けても一文も書き進められない日が何日も続いていました。
もう私は文章の出来にこだわり始めたらどこまでも深みにはまっていくタイプなので、一文書くことに数時間、下手をしたら数日かけることもあるわけです。
長編小説の中のたかが一行にそこまでこだわる意味があるのかと思われるかもしれませんが、その一文で書き上げた500枚の原稿の価値を決めてしまうほどの大きな影響力を持つ一文があるのです。
そこでどのような言葉、表現、文体を使うかによって、小説の良し悪しが大きく変わってしまう。
大袈裟な話ではなく、本当に砂漠の中から一粒のダイヤを探し出すような作業をしている時に、小説を書く楽しさを問われたのです。
それも、仕事を辞めすることが無いから小説家を目指そうと考えている方からの質問であったため、私は答えに困りました。
元々話作りが好きな私でも、行き詰った時には相当心身を疲弊させる仕事なので、簡単に小説家にでもなってみるかって考えの人には辛いことが多いと思ったのです。
ですが小説家を目指すなと言っているわけではありません。むしろ私は、この仕事を本気でしたいという気持ちがある多くの人に小説家を目指してほしいと考えています。昔からの事ですが小説家の世界は敷居が高すぎる気もしますしね。
紙の上で上手く言葉を躍らせる専門的分野において、更に限られた優れた人間しか小説家にはさせない頑固な一面を持ちながら、コネや人脈を持つ一部の人間には、ほいそれと小説家の席を譲ってしまう。
これじゃつまらないでしょう。そんな愚行をするくらいなら、本気で小説家を目指す人達に対し、門を開けてあでるべきだと思います。
話がずれましたね。
つまりの所、小説家の仕事は高い専門性を求められるため、苦労する部分は多いのです。これは全ての仕事に言えることでしょうが、半端な気持ちで職についても必ず投げだしたくなる時が来ます。そして多くの苦悩の中から、小さくても喜びを見つけ出していく。それが出来なければ仕事を続けられませんからね。
 それで私は答えに窮したあげく「楽しいですけど、その分苦しい時は本当に苦しいですよ」と、曖昧な言葉を返してしまいました。結果としてはその人も小説の完成には至らなかったらしく、小説家になることはすぐに諦めてしまいました。
 ですから結局は、その人が小説家に向いているかどうかではなくて、辛い仕事や作業の中でも楽しみや喜びを見つけられるかどうかなのだと私は思います。数日間パソコンの前でたった一行、一文に苦悩しても、探していたものを見つけ出した時の喜び。
これは何物にも代えがたい幸せなものなのです。
苦労を重ねたうえで、一かけらの幸せを見つけること。それが小説を書く楽しみの一つなのかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月9日水曜日

足を踏み出すこと

これは犯罪に関する記事ではなく小説関連の記事です。何ともわかりづらいタイトルで申し訳ないです。
 
 型に捕らわれずに作品を書くことは可能なのか。
私は最近よくそのことを考えます。
世に出回る小説の多くが、小説とはこうあるべきだという定義の中で作られた作品です。しっかりとプロットが立てられ、話に起承転結があり、文法や表現に間違いや偏りのない作品を全ての作家が目指しているはずです。
 そしてそれが小説家としての役目でもあります。「この作業を1から10までしっかりとやり通した物が小説だ!」という考えが広がり、出版社も正しい形の小説を望む以上、型や枠から外れた作品など必要とされないのですから仕方のないことです。
 私もこういった考えの下で作られた作品こそが素晴らしいと思いますし、自身でもそういった小説を目指して書いています。決められた型の中に自分のオリジナルの文章を流し込み完成させる。それが小説を小説としてあらしめるのです。それが答えなんです。
それが答~え~だぁ♪ (ウルフルズです、古いですね…)
正しい小説という枠組みの中で、全力でペンをふるってこそ素晴らしい小説は出来ると思います。決められた形の中ですぐれた作品を書き出すのが小説家の仕事なのでしょう。
 でもですよ、ちょっとくらい枠から外れた小説があってもいいとは思いませんか。
正しい形ではないからこそ、かえって作品に艶が出るのではないでしょう
ほら、あれですよ、あれ。本阿弥光悦の作品に見られる歪みや割れ、正しい形を熟知した上で、あえてそこから一歩外れる。だからこそ彼の作品には美術品には疎い私にでも感じ取れるだけの光があるわけです。
 これが本阿弥光悦さんの作品




   いい味出してるでしょう。
 そこで私は思う訳です。
読者に美を感じさせるようにな作品を作り上げてみたいと。
「よっしゃ、私も道を外れてやろう!」と。
………はい、意気込みだけで未だに実現は出来ていません。
というより、道を外れることすら出来てません。
なぜなら正しい道が示されていて、皆その道を通っているわけですよ。大物作家であれ、私のような小物作家であれ、進むべき道を与えられているわけです。
その道から外へ足を踏み出すのは正直怖いです。
ある意味小説家が職場放棄したようなものですからね。
正しい道から外れ、長時間かけて一つの作品を作り出す。
そしてその作品で、道を外れることは間違いではないと示すこと。悔しいけれど今の私には無理な話に思えます。
ただ、いつの日かコッソリとチャレンジしてみたいと思ってます。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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2017年8月8日火曜日

新作への悩み


 新作に取り掛かる前、私は毎度の事頭を抱えることになります。
それも前回出した作品の反響が大きければ大きいほど、私の背中にのしかかる重圧も強くなるのです。新作には、前回の作品よりも大きなインパクトを与えることが必要となります。
そしてただインパクトを与えるだけでも駄目なのです。
その時代の読者が好むインパクトを作品に乗せなければなりません。
恋愛小説が多く売れている中で、宇宙で戦いを繰り広げるような作品を書いても、本当に素晴らしい作品でもない限りヒットとはいかないでしょう。無論その逆もしかり。
それに出版社によって作品の好みも大きく違いますし、現在の市場で売れ行きのいい話を書くことも求められてきます。
 ですから小説家とはビジネスマンでもなければならないわけです。
悲しい話ですが、ペンを持つ前に世の動きを見ることのできる目を養うことが大切なのです。一流の小説家は一流のビジネスマンでもあると私は考えております。一部の天才小説家と世の流れに乗れない小説家を除いては、大抵この考えを持っているでしょう。
 で私は、書きたい物を書く世の流れから外れた小説家でして、多少はどんな本が売れているのか気にはしますけど、やはり自分が書きたいもので勝負していこうと腹はくくっています。
書きたいもの書いて何が悪いんだと、子供のような駄々をこねながらも、我が道を切り開き歩いています。
 こういうことをしているのにもハッキリとした理由がありまして、それは自分の主にあるもの、自分の根幹にあるものを題材にして書いてこそ素晴らしい作品は生まれるのです。
小説を長い時間書き続けて来て得た理屈ですが、これは正しいものだと私は信じています。
 それで私が時たまブログに上げている読み物も、けっこう自分の好きなように書いてるわけですが、昨夜UPした『夜のカフェテラス』が思わぬ反響で、身に染みるありがたいコメントやメッセージをたくさんいただきまして、次にブログにUPする読み物をどのような構成にするかなど悩んでるところであります。ゴッホ作の『タンギー爺さん』あたりを出してみたいですけど、なかなか難しそうですし。
 また美術品や芸術品を元に構成を考えるか、実在の人物を使わせてもらうか、登場人物も全て私のオリジナルで書くか、どのような話にするか等々悩みは多いです。せっかくブログに上げるのなら、読んでいただいた方に満足していただけるものを書きたいですし。
やはり物語を創造するという作業は神経を使いますね。
しかしこれで生きていくと決めた以上、頑張らなくては。

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2017年8月7日月曜日

夜のカフェテリアで

 久し振りに読み物を一つ載せようと思います。
話の舞台はゴッホの『夜のカフェテリア』
今回登場人物として使わせてもらったのはロダンの『考える人』とピカソの『泣く女』です。そしてほんの少しムンクの『叫び』も出てきます。
 お時間のある方は目を通していただけると嬉しいです。







   ・夜のカフェテリアで
南フランスのアルルの星空の下、多くの人々で賑わうカフェテラスで女は泣き続けていた。
自分の向かいの席で泣き続けている女。自身で涙を止める理由は知っているようだが、女は決してそれをしない。泣き続けることを本能としているかのよう。男は一度も自分の前に座る女を見てはいないが、女が泣いていることだけはわかった。泣く女であるが故に泣く。それは必然の行為だ。
 
体臭の上に香りのプーケを載せた、女性客の後ろ姿を見ながら女は口を開く。
「いつまでそれを続ける気?こんなところで考え事なんかしないで」
涙を流してはいるが、女の声には涙の色はない。怒りのこもる口調で問いかけられた男は右頬と顎の間に手を置き、質問に答える気配をまるで見せない。石のように動きを止めている。
「私に同じ質問をさせないで」
女の声に怒りが増したように思えた。これ以上黙っていると、女の飲んでいるホットコーヒーを頭からかぶることになるかもしれない。男の前に座る女は決してヒステリックではなく、そのような行為とはかけ離れた女性であったが、コーヒーの香りに香水の強い香りが混じりあう店内の、地獄の入り口のような匂いが神経の切れた女の姿を想像させた。仕方なく男は答える。
「考えてはいない。お前は浅はかな勘違いをしている。容姿だけで目の前に座る人間のことを理解できると思わないことだ」
女の返答は早い。
「偉そうね。どういう育ち方をしたのかしら。それで、何?考えてもいないなら何であなたはうつむいているのよ」
「うつむいている訳でもない」
泣く女は首を横に振った。
「じゃあ何?」
「眺めているんだよ」
「何を?」
うつむく体勢の男の目に、随分貧相な靴が入った。元はそこそこいい靴だったようにも見えるが、今は薄汚れ所々に砂や泥がこびりついている。泣き続ける女はその靴をテーブルの下でパタパタと動かし、怒りを表している。足先を動かし怒りを表す様に面白みを感じ、男の口は少しだけ軽くなった。
「私の眼下に広がる地獄を眺めているんだよ。地獄の底でもがき苦しむ罪人たちを、私はこうして眺めている」
男の言葉の終わりに泣く女のため息が重なった。
「呆れた。じゃあ何、私達が座るここはカフェテラスではなく、地獄を見下ろす高台なの? それで苦しむ罪人たちをつまらなそうに眺めてるあなたは神だとでもいうわけ?」
「いいや、ここは紫に近い青の夜の空の下、黄色い明かりが照らすカフェテラスだ。そして私は地獄の門から独立した者であり、神ではない」
「頭が痛くなってきたわ」
男の言葉に呆れ果てた女は、後ろを通った背の高いウェイトレスに赤ワインを頼んだ。ワインを注文した女の態度は目の前の男に対するものとは違い、非常に丁寧だった。
「赤ワインくださる?」と。その違いに驚きを感じたわけではないが、男は地獄から目を上げた。
「やっとこっちを見たわね」
目の前に座る女の顔はとても言葉で表現できるものではなかった。今宵の空のような青い髪に、体調を崩した灰色を満遍なく顔に塗りたくり、黄色い影を垂らすその顔は崩れかかったようにも見える。この世のものとは思えない顔で泣き続ける女。男の眺める地獄に今すぐみでも住まわせることができるほどだ。赤黒い地獄の背景がよく似合いそうな女。だがそんな女を、このカフェテラスにいる人間たちは誰も気にする素振りは見せない。明らかに異端に見える女は、このカフェの中では普通の一個人であると認識されているようで、それならば男も余計な口出しはせず、この女を人と認めた。人として認識されている者を、人に在らざる者と捉えることはあまりにも卑劣で非情だ。男は聞く。
「お前は誰なんだ?」
「見ればわかるでしょう。泣く女よ」
「そういうことではない、一体何者かと聞いている」
泣く女の表情に変化はなかったが、その変化の無さがかえって女の影の広がりを男に伝えた。
「名前はアンリエット・テオドラ・マルコヴィッチ。それともドラ・マールの方が伝わりやすいかしら。服も髪も目も、待とう空気さえ黒い美しい女性に連れられ、あなたに会いに来たの」
男はまた顔を下げる。彼の視線の先には赤黒い穴が広がり、そこでは罪人たちが手を伸ばし助けを求めている。希望や絶望、そして渇望の渦巻く地獄の住民たちの顔。明るいカフェテラスでまで見る物ではないその光景に嫌気が差し、男は地獄から目を離した。
「お前は私の話が分からないと言ったが、私にもお前の話が理解できない。どうやら我々は、言葉で伝えることを苦手としているようだ。お前がそのことをどう感じているかはわからないが、これは重要な問題だ。自分の考えや思いを正確に他者に伝えられないことは非常に辛い。生きるという概念上、他者に物事を伝えられないのは多くの問題を抱えることとなる」
夜の空気を重厚にまとい、存分に見せる価値のある品性を微かに残したウェイトレスの手でテーブルに置かれた赤い液体は、熟した果実の香りを放ち女の喉を通るのを待ちわびているように見えた。悪魔の液体だ。それを女は躊躇することなく口元へ運んだ。
「あなたにとって生きるという行為は概念でしかないの?」
「私は生きることを必要としていなかった。そもそも私は…」
言い淀んだ男の目と、今にもこぼれ落ちそうな女の目が結ばれた。
「続きは?」
「やめておく。お前には私の話は理解できないであろうし、お前に話す必要もない」
「そのほうがいいわ。私もあなたの話は聞きたくないもの」
「それより…」
女はまだ言いたいことがあるようだった。目を細め男を見ている。
「その『お前』って言い方止めてくれない。今教えたでしょう、どちらで呼んでもいいから『お前』はやめて」
滲み出そうな感情を隠すため、男は右手を強く頬に埋めた。
「ではドラ・マールと呼ばせてもらおうか」
女は首を横に振る。
「それでも窮屈ね。ドラでいいわ」
「ドラ、ドラか」
「それで決まりね。『お前』はやめて」
「わかった。それを試みる」
赤い悪魔の液体を飲んだドラ・マールは灰色の頬をほのかに赤く染め、奥のテーブルに一人で座る男性を見た。
「彼は一人でいるのに楽しそうね。おそらく大人である彼には失礼な言い方かもしれないけれど、少年のように生き生きとしている。この世に生を受けたばかりの小鳥の産毛のよう」
ドラ・マールは手に持つグラスを回しながら、目の前に座る男に目を戻した。
「あなたとは大違いね」
「同じ人間などいない。完全に同じ人間は存在を許されない。生命とは一つの個を成すものであり…」
「あなたの話は聞きたくないと言ったでしょう」
二人の間に一瞬の沈黙が流れ、グラスの中を空にしたドラ・マールは声を出す。
「ねぇ、手紙を書いてみない?」
「誰に?何のために? その行為に必要性はあるのか?」
グラスとコーヒーカップが置かれただけの空っぽのテーブルの上に、空虚なため息が通る。
「理由ばかり求めていても何も始まらないわ。意味を持たない行為を楽しんでこその人生じゃないかしら。あなたはまた私の言葉に理屈をこねるのでしょうけど」
「見透かされているのなら、その行為は意味をなさない」
ドラ・マールはテーブルに身を乗り出すような体勢になる。振り返り店の奥に目をやったと思えば、次は体を乗り出す。それも泣きながら。何とも忙しい女だった。
「やってみましょう。お互いが一言づつ言葉をつなげていくの。それで完成した手紙を彼に渡す。同じ日の同じ時間に同じカフェテラスにいるんですもの。手紙一枚で繋がりを作るの」
「私にはまるで理解できない」
「遊びを理解する必要はないわ。でもね、あなたが作り出した地獄を眺めているより、誰かに向けて手紙を作ることの方がずっと有意義なことよ」
男にはドラ・マールの涙が少し薄らいだようにも見えた。賑わうカフェテラスの中、目の前で泣かれ続けているよりは『手紙を作る』という、女が発案した無意味な行為に励むことの方がまだ賢いように思え、女に目をやりうなずいて見せる。
「あら、意外と要領よく納得してくれたのね」
「この納得にも深い意味はない。ただこの場の悪しき居心地を取り払うためだ。それに意味はないし、意味を求めてもいけない」
男の声が聞こえていないかのように女は話す。
「さぁ、さっき説明した通りよ。お互いに一言づつ言葉をつなげ手紙を完成させるの。そしてそれを彼に渡す。いいわね、じゃあ私から」
男の納得の後、遊びはすぐに始められた。泣くことから遠ざかり始めた女は、勝手に手紙を作り渡すことに決めた、カフェテリアの奥に一人で座る青年を見る。
「生きるということは」
生きること。この女は一体どんな内容の手紙を彼に渡すつもりなのか。全く知りもしない人間から生きることについての手紙を渡されることは、恐怖以外の何物でもないはずだ。だが地獄を眺め続けることだけに時間を費やしてきた男には、この流れを断ち切るすべはなかった。
「考えるかのように一点を眺め続けるだけではなく」
続けられた男の言葉にドラ・マールは初めて笑った。泣いているのだが、心地の良さが伝わる表情。
「自らの行動に価値を見出し、人生を描き切ること」
自分のすることにいちいち難癖をつけてきた女の言葉は、決して飾り気はないが男の内心をくすぐるようだった。自らの行動に価値を見出す、悪くない言葉だ。
 たった一行で終わるようではその手紙は手紙としての体を成さない。男は迷ったが言葉を続ける。
「人が生きる道には、多くの苦難が待ち構えているだろう」
「だが君は間違えてはいけない」
ドラ・マールは即座に言葉を付けたし、また笑みを見せた。どうやらこの遊びを本当に楽しんでいるようだ。自分と関係のない女とはいえ、自分との遊びに興じる女性を落胆させるのは忍びなく、男はこの奇妙な遊びに戻る。
「苦難を多く味わうほど、いずれ訪れる喜びの花は大きく咲く」
ドラ・マールは考えるようにカフェテリアの天助を見上げた。言葉を探しているのだろう。
「喜びの花に辿り着くまでに、悲しみの波に飲み込まれそうになることもあるでしょう」
「波に負けぬには笑う事」
「そう、高らかに笑いなさい」
ドラ・マールは男の答えを望んでいるようだった。悲しみの波に襲われた時どうすべきか。男は女の目を見て、頭に浮かんだ考えをそのまま口に出す。
「我々は常に人生を描き出す筆を握っている。生を得て、生を堪能し、生を土に置く。その間に笑う時間が豊富であれば、描いた人生に美が宿る」
女は小さくうなずいた。
「そうね、きっとそう」
「ドラ、それも手紙に載せる一文か?」
「あなたの言葉に対する感想よ。あなたは生真面目すぎるわ。でもその気持ちはきっと伝わる」
ドラ・マールは確かに笑った。顔に溢れ続けていた涙はようやく止まったように男には思えた。
 夜のカフェテラスで女と男の遊びは続いた。知らぬ者同士が即興の言葉で手紙をつづり、それをまた見知らぬ青年に渡す。渡される側にとっては迷惑な遊びかもしれないが、泣くことと眺めることを続けてきた二人にとっては裕福な時間であった。
 二人で紡ぎ合った言葉を紙に書き、それを読み返したドラ・マールは一人笑みを膨らませる。
「なかなか傑作な手紙になっているわ」
「私にも読ませてくれ」
男は女の手から手紙を受け取り、目を通す。意味の通る部分もあるが、それは手紙を模した意味不明な言葉の羅列にも男には思えた。
「人に見せるものではないな」
「いいじゃない。これはこれで素敵な手紙よ。彼ならこれでも、何かを感じ取ってくれるかもしれない。渡してくるわね」
男の呼び止める声が聞こえないように、女は椅子から立ち上がりカフェテリアの奥に座る青年の元へ歩いて行く。
 突然女に声をかけられた少年は驚いたようだが、意外と話し好きなのかドラ・マールとの話は弾んでいるようにも思えた。女は図々しくも青年の向かいの椅子にまで座り込み話し込んでいたが、男を待たせることに悪気を感じたのか、一度男に振り向き青年のテーブルを離れた。お互いに手を振り合う二人。その姿は何故か二人が古くからの友のようにも思えた。
「どうだった、受け取ってもらえたのか」
「もちろん」
ドラ・マールは先ほどとは違うウェイトレスに、二杯目の悪魔の飲み物を頼んだ。
「またあれを飲むのか」
「いいでしょ。今日の夜空にもカフェテラスにも、赤ワインが一番合うわ。それに…」
女は目の前で赤ワインを揺らし、その先に歪むように映る男を見る。その目に押され男は椅子に深く体を預けた。女が何を言いたいのかはわからなかったが、男は頭に浮かぶ疑問をすぐに投げかけた。
「彼は何と言っていた」
「ありがとうって。また一つこの世界に形跡が残せたって」
「形跡?」
真っ赤な液体を口に含み、女はその液体を口内で転がしている。どうやらドラ・マールは悪魔の液体の嗜み方をよく知っているようだった。
「彼ね、おかしなことを言うのよ。僕はまだこの世界の住人になったばかりなんだって。なんでも青いターバンを巻いて真珠の耳飾りをした少女に橋の上を離れる勇気をもらって、その少女に自分のこの世界での形跡を伝えるために、今このカフェテラスにいるんですって」
「一体何なんだそれは。まるで理解が及ばない」
ドラ・マールはまた赤い液体を喉に通す。
「私にもわからないわ。でも彼はこれからも旅を続けていくんですって。時に、自然の声に耳を傾けながら」
「理解できないが、おそらく彼の心は涼やかなのだろうな。我々とは違って」
「あなたも地獄の中の罪人たちを眺めることから離れてみたら? そんなもの見続けていたって飽きるでしょう」
空になったコーヒーカップの底で、コーヒーという飲料だった液体が寂しくこびり付いていた。
「私にはそれをすること以外に、理由を見いだせない」
ドラ・マールの手が男の手首をつかんだ。灰色の手からは意外なことに暖かい熱が伝わってくる。
「理由なんていらないわ。あなたはまずそこから立ち上がりなさい。あの青年のように」
「ここから?」
「そうよ、地獄の底を眺める高台から立ち上がるのよ」
ドラ・マールの顔から涙は完全に消えていた。その理由を掴むことは出来そうだったが、男はあえて手を伸ばさなかった。この世界にはきっと理由のいらないものもあるのだ。
 新しい遊びを思いついたかのように男の手を引く女。
「仕方ないな」
男は椅子の形をした高台から腰を上げ、連れられるように女の後を追った。
地獄を眺めることより有意義な遊びが始まる予感に、胸を高鳴らせながら
 街を照らす夜の空気を、男は思い切り吸い込んだ。

                              芝本丈


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2017年8月5日土曜日

酔いどれ作家

 私はお酒が大好きな人間でして、よくお酒を飲みに出ます。

しかし大好きとは言っても、私はかなりお酒に弱いたちなのですぐに酔っぱらってしまいます。それでも若い頃はまだけっこうな量を飲めたとは思うのですが、最近はもうすぐに酔っ払い、若かりし頃と同じように飲んでしまったらもうボロボロです。記憶が無いこともしばしば。そして、別れ話をする時のお酒は最低です。私の好きなワインでさえ腐ったブドウの味しかしない。気がつけば隣に女性は居ないく、悪酔いしてるという酷い目にあいます。

 お酒という飲み物は一緒に飲む相手さえ間違えなければ、とても楽しい気分にさせてくれます。それで悪いことに日本には四季というものがあり、いつでもお酒を楽しく美味しく飲めるから困ったものです。特にこの時期はビアガーデンなどもあり、夜の繁華街には気持ち良さそうな酔いどれがうじゃうじゃ。前に飲みに出た時はビルの階段で、スーツ姿の男性が眠っているのを目撃しました。そして何故かその上の階段の踊り場にもうずくまるように眠るスーツ姿の男性が。一体どういう状況だったのか未だにわかりません。


 私は以前何かの本で、世界中を旅していろいろな国や文化を持つ人たちの声を載せた本を読んだことがありまして、その本の中で出てくる何人かの酔いどれ詩人が非常に胸に響くことを語っているわけですよ。(どんなことを言っていたかここに書きたかったのですが、引っ越しの際にその本が行方不明になってまして、書けませんでした。まぁそもそも、本の内容を勝手にブログに載せてしまったら法に触れるので、どっちみち駄目でしたね)


そこで、昨夜私は思いついたのです。

私も酔っぱらって小説を書けば、心に響くことが書けるのではないかと。酔いどれ詩人ではなく、酔いどれ作家ですね。

 それで昨夜も赤ワインとマンハッタン、そして水代わりにモヒートなどを飲み、頭の上で天使や星をクルクル回らせ帰宅し、パソコンを開いたのです。
ちなみに私が飲んだのはこいつらです





しかし…… はい、全く駄目でした。星と天使が勢いよく回るだけで、頭は一切回りませんでした。
それでもですね、一応書いては見たんですよ。駄目なものでもいいからブログに載せてみようと思って。もう必死に。録画しておいたGREAT RACEをテレビに流しながら頑張りました。

で、朝起きて昨夜書いたものに目を通したわけですよ。
………けっこう私頑張って書いてたんですよ………
…ゴミでした。

もうね、ゴミにも値しないようなゴミ。

やっぱり小説は酔っぱらって書いてては駄目ですね。
酔いどれ小説家なんて都合のいいことは無理なんです。
しっかりと腰を入れて書いていかなければいい作品など生み出せない。
という話でした。

まだアルコールが残っているのか、変な記事になってしまいました。

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2017年8月4日金曜日

困ってます

私はSEESAAブログをやっているのですがわからないことがあります。

それは私がフォローさせていただいている方に教えてもらったことなのですが、ブログの
記事の下の所にも人気ブログランキングのバナーを貼った方が良いと言われ、ああ、確かに
その通りだと思い説明の乗っている他サイトを利用し試行錯誤しているのですが、何度や
っても上手くいかないのです。

私がバナー貼り付けの参考にしたサイトの記事が古いからなのか、何度やっても記事の終わりに人気ブログランキングのバナーが出ないんです
 せっかくこのような有益な情報を下さった方にも悪いので、なんとかして貼り付けたいのですが、私がよほどの間抜けなのか上手くいかない。

昔よく読んでいたブログの人が「Javaも読めない奴は人間のクズだ」みたいなことを書いていたけれど、あの人が今の私の現状を見たらどう思うのだろう

人気ブログランキングのバナーもろくに貼れないのだから人間のクズどころではないだろう。まぁいいさ、私の事を見下したい奴は見下せばいい。

 それよりも人気ブログランキングのバナーの貼り付けを何とかしなければ。

誰かわかる人いましたらお教えいただけたら嬉しいです。(私はパソコンに関してはかなりのアホなので、丁寧に教えてもらっても手間取るかもしれません)

それともう一つ。
皆さまの応援のおかげで、昨日人気ブログランキングの小説部門で3位に入ることが出来ました。本当にありがとうございました。大袈裟な話ではなく涙が出るほど嬉しかったです。
そしてどうか今後とも、応援の方よろしくお願い致します。

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2017年8月3日木曜日

持ちうる技術を見せることの可否


 小説を書くという仕事は積み重ねであります。苦悩や苦労を積み、経験も積み、その上で書き上げた原稿を積んでいく。その後には編集者との打ち合わせなどもあり、大きなテーブルから崩れ落ちるほどの多くの物を積み重ねていきます。そして今日は経験と技術について話していこうと思います。

        ・経験とは
 まず人には個人個人生きてきた人生経験があります。そしてこの経験が無くしては小説は書けません。ある意味小説とは著者の人生経験を映し出すものでもあるからです。多くの悲しい思いや辛い思い、その隙間に少しだけ味わえる喜び、感動。こういったものを多く味わった人の小説には、本当に深みのある話が多いのです。そして我々小説家はそういった経験を駆使して、本を手にしてくれた読者に対し喜びや感動を与えようとします。ですから人生経験なくしては小説など生み出せないのです。
 で、もう一つの経験について。それは小説を書く上で積み上げてきた経験です。これはとても大事なもので作品を形作る上で大変役立ちます。

例えば、若い男女が路上で立ち話をしているシーン
僕らは他人の家の塀にもたれかかり話をしていた、
僕はA子に聞く
「どうしてそんなに怒ってるんだよ」
「私何も怒ってませんけど」
彼女は僕が手に持っていたペットボトルを奪い取り、半分ほど開けそれを川に投げ捨てた。
「ざまぁみろ」
彼女は笑った。
と、なんとも味気ないシーンになってますね。
このシーンをセリフは変えずに私が書き換えるならば
僕らは他人の家の塀に並ぶようにもたれかかり、僕らの目の前には道路に沿うように空の色と同じ夏色の澄んだ川が流れていた。
僕はA子を横目で見る。
「どうしてそんなに怒ってるんだよ」
僕と同じように川を眺めていたA子は、僕の言葉に目を細める。
「私何も怒ってませんけど」
A子は僕の手からペットボトルを奪い取り、清涼飲料水を口から流し込む。冷えた甘い液体が彼女の細い首を通っていく。僕は思わずその白く透明な首の動きに見とれ、彼女の手から高く投げ飛ばされたペットボトルの行先を追えなかった。ただ水の弾ける音が聞こえ、僕の手から奪われたものは川に落ちたのだと知る。
「ざまぁみろ」
青い空に浮かぶ太陽のようにA子は笑った。その笑顔のまぶしさが、彼女の行動の意味不明さをかき消した。
こんな感じでしょうか。実は、上にあげた何ともつたない文章は、大学生の頃に私が書いていたものなのです。小説を書き始めたばかりとはいえ酷いものです。
 で、それからいろいろありましたが、現在まで経験を積んだ私が書いたものの方がずっとマシになったでしょう。経験さえしっかりと積めば、これぐらいのことは簡単にできるようになります。綺麗に整えようと思えばまだまだ改善の余地はあるのですが、私は綺麗に整いすぎている文章も自分で書くのは好きではないので、多少粗削りで仕上げてみました。粗さがある方がこういう場面ではいいのかなと私は思います。端正で仕立ての良いジャストサイズのスーツを着こなしたような隙のない文章よりも、これくらいの文章の方が生々しさというか、二人の息遣いが伝わる気がしませんか。←このように客観的な視点から自分の文章を見られるようになるのも、経験があってこそなのかもしれません。
 
 で、本題に入ります。(毎度前書きが長くなって申し訳ございません)このように何度も何度も小説を書いたり、他の先生方の作品を読んでいき、その中で身に着けてきた技術をどう使うかが問題なんです。私は真面目な人間だとは思っていますが、昔は我の強さも持ち合わせていました。本当に恥ずかしい話なのですが、小説を書き始めたのも私の我の強さによってのものなのかもしれません。先ほど載せた学生時代に書いたものは酷いですが、昔の私は下手くそなのに、自分の持ち合わせて技術を人に見せたくて仕方のない人間でした。「俺はこんな技術があるんだ、こんなに文学的な表現ができるんだ」みたいな、人より優れた部分を証明したい我執。以前の私はこの我執に押され、小説の中で自分の持ちうる技術を全面にふるっていました。それ故、私の過去の作品には人様には決してお見せするとこも出来ないような作品もありました。
 きっと小説などを書いている方なら誰でもこの我執はあるはずなんです。技術を見せたい気持ちはあるはずです。ですがそれがどれほど優れた技術でも、使いどころを間違えれば自身の小説をダメにしてしまいます。「俺の書く話はすごいだろ、みんなひれ伏せ~」なんて思いの透けて見える作品なんて読みたくないですもんね。
では、せっかくの経験から得た技術をどうするのか?
これは最近私が見つけた答えなのですが、持ちうる技術をあえて見せないで下さい。
優れた技術を見せないように書いてこそ、一番技術が伝わるのです。
下手に刀を見せては駄目なのです。無防備な丸腰に見せることが大事。
「あ、あいつ丸腰だぞ。斬ってやる」って近づいてきた敵を先に制しているみたいな。
私も他者の作品で何度もこの経験をしたことがあり、「こいつ大したことねぇな」と思い迂闊に近づいて行き、小説を読み終えた時にはズタボロにされたような感覚です。
 つまり上手な小説を書くためには、技術を全力で使うだけではなく、あえて隠すことも大事という話でした。本当に優れた技術は見せないでこそ伝わるものなのです。

何か非常に伝わりづらい説明になってしまい申し訳ございませんでした。

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2017年8月2日水曜日

魅力的な小説を書くためには


 私は日々、人を引き作られるような作品を書くため努力しています。頭一つ飛びぬけた異星人のような才能を持つ人ならまだしも、私のような普通の人が小説家を目指し、小説家になり、その世界で生き抜いていくためには努力は必須でしょう。どんなに面白い作品を書けたとしても、それで人を引きつけ購入させるだけの魅力が無ければ、その小説に商品としての価値はないのです。
 
 もちろんそれが悪いと言う事ではありません、自分で考えた話を小説として書き上げ、自分や周りの人達と楽しむ分にはそれで何の問題もない。長編小説をブログで紹介したっていいんです。ですがその小説を商品として扱うとなると、多くの問題に突き当たります。
自費出版すると言ってもかなりのお金がかかりますし、最短距離で小説家になれる可能性がある新人賞などに応募したとしても、その道は恐ろしく狭き道です。人一人が蟻の巣穴に潜っていくくらいの道です。
 そしてやはりその狭き道を通るには、面白さだけではなく魅力を兼ね備えたうえでの面白さが必要となってきます。恋愛小説を書くなら恋愛の話が好きな人を引き付ける魅力を、ミステリー小説を書くならミステリー好きを引き付ける魅力を、官能小説を書くならエロ話好きな人を引き付ける魅力を兼ね備えた話を書かなければなりません。(私は官能的な話を書くことを最も苦手としています)
 ここで問題となってくるのが、いかにして自分が書く話に魅力を出すかですがこれが何とも難しい。それこそどう魅力的な作品に仕上げるのかなんて、作家一人一人みんなそれぞれの手法を持っていることでしょう。ですので皆さんも独自に魅力的な小説を書くための手法を取り入れてください。……てな感じで終わらせたら怒られてしまいそうなので、一つだけ紹介しておきます。
 それは、小説の主題とするものに関する知識を深めることです。深めると言っても、半端に幅広い知識を得るくらいではだめです。本当に魅力的な作品にしたいのなら小説を小説と成せるだけの最低限の技量の上に、大袈裟かもしれませんが主題としたいものについての専門家並みの知識を身に着けることです。小説を書こうと思い立ち、3年ほどその小説の主題となる職に就き実査に働いた作家さんもいます。事実、私は知識を山のように積み上げ、自分の作品で出版にまで至った作家を知っています。
 ですから結局のところ、自分の作る作品に対してどれだけの熱を注ぎ込めるか。どれだけひた向きに自分の作品に取り掛かれるか。成功はそこにかかっていると私は思います。

(怒りを込めて付け加えておきますが、人脈やコネを使って出版されている作品について、私は素晴らしいと思ったことは一度もありません。そのような方々の作品は薄っぺらで熱を感じませんので)

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小学生がスマホゲーム

こんにちは、シバジョーです。 私はたまにパズルなどのスマホゲームをやりますが、長時間することはありません。 子供の頃はかなりゲーム好きでしたので毎日のようにやっていましたが、スマホの画面は小さいですし、なんか集中も出来ません。 ちなみによくやっていたゲ...