http://www.2ko2kora2ko6256.com シバジョーのブログ: 小説を削りだす作業 オッカムの剃刀について

2017年12月24日日曜日

小説を削りだす作業 オッカムの剃刀について


 

本日は「オッカムの剃刀」についてです。オッカムの剃刀とは、一見複雑に見える事柄でも、複雑さを呼び起こしている要因をカミソリで削ぎ落としていくと、実際には単純な原理で説明できるという考え方です。これは哲学的観念なのですが小説にもこの考え方は応用出来ますので説明していきます。


 
【オッカムの剃刀】
 オッカムの剃刀とは、11世紀以降に主として西方教会のキリスト教神学者や哲学者などの学者達によって確立された、スコラ哲学の神学者オッカムが多用したことで世に広まった哲学です。オッカムの剃刀は20世紀にはその妥当性を巡って議論が重ねられ、未だに疑問視の声も絶えません。カミソリという言葉は、説明に不要な存在を切り落とすことを比喩しておりますので、思考節約の原理や思考節約の法則と考えておけばよいでしょう。

ちなみにオッカムの剃刀はケチの原理とも呼ばれます。

京都大学大学院文学研究科の准教授であり哲学者の伊勢田哲治さんは、例としてこのような説明をしています。

  「外から力のかからない物体は、神が等速でまっすぐに動かし続けている」

この場合、「神が」と言う部分が説明に不要であるとして、オッカムの剃刀の定義に沿い、不要な部分を切り落とすと、次のような説明が得られるとしました。

  「外から力のかからない物体は、等速で直進する」

 

つまりは不要な部分を削ることで、伝えるべき本質だけの文になるのですね。そしてこの考えは小説を書いていく際にも必要になってきます。

作者がどんなに書きたい表現や言葉でも、それを書くことにより小説の芯となるものが、霞んだり見えなくなったりすることもあります。作家としてそれが本当に正しい行為かは疑問が残りますが、読者に作品の内容を伝えやすくするためには、作者の心を表す言葉でも削ることが必要かもしれません。

 これは新人賞などに応募する際にも非常に重要なことになってきます。上手く下読みの審査を通過できて、2次審査、3次審査、最終審査に進んだ時に、余分な部分が残っていることは物凄く嫌われます。←数多くの作品を読んできて、疲れが溜まっているのかもしれませんが、とにかく贅肉が付いたままの小説は嫌われます。多少下手であっても、最終審査まで残った場合には、無駄な部分を削ぎに削いだ作品が勝つことが多いです。

もちろん審査員の好みにもよりますが、無駄を嫌う賞は多いです。しかし、文学性を高めるために、意図して無駄を残すことにより成功した作品もあります。ですので結局のところどの審査員に当たるか運次第とも言えますが、成功の果実を一刻も早く手にしたいならば、多少の無駄ならば好んでくれる数少ない審査員に見てもらうことに賭けるよりは、オッカムの剃刀のごとく不必要な部分を削りに削り、そういった作品を好む審査員のいる賞に送るのがいいでしょう。

 

事実、不必要なものを削ぎ落とした作品の方が、市場での売れ行きも強い傾向にあります。ですから、よほど自分が力を入れて書いたものでなく、それが作品の価値を変えてしまうように思えたら、削ってやることが大事でしょう。変に不必要と思われるものを残すより、作品の価値を高めやすいですから。

そしてここで大事になって来ることが、削っただけで終わりにはせず、作品に価値ある文章を足さなければならないということです。削りすぎて作品がヒョロヒョロの状態では、まず読者の心を引き付けることは出来ないのです。無駄な部分を削ぎ落とし、濃さを増した作品の価値を損なわないだけの文章を、出来る事なら更に作品の価値を高めるように、継ぎ足して下さい。

それをした後に、改変前の作品と改変後の作品を読み比べてみて下さい。あなたの作品は文学の内に足を踏み入れていることでしょう。

 

 

  シバジョーのつぶやき

年末年始に向け、食料の仕入れに力を入れ始めています。誰にとってもそうだと思いますが、私も年末年始は一年で最も食べるので、「あれも食べて、これも食べて」と美味しそうなものを探し回っています。でも食べたら太るんですよね~。毎年「これ以上食べたらまずいぞ」と思いながらも、「年末なんだから仕方ない、正月なんだから食べたっていいだろ」と自己正当化し食べ過ぎてしまいます。

ですので今年こそは食べ過ぎないようにしようと心に決めていたのですが、年末が近づくにつれ食欲が目を覚まし、食料を探し回ってしまっています。誰かこんな私を止めて下さい。

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